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【三重】津の高齢者施設勤務 年下の入居者を支える

2017/03/19

92歳 看護師現役です

 津市一志町にある高齢者向け住宅施設で、数え年で90歳の祝いの卒寿を超えた女性が訪問看護師として働いている。この道70年余りの大ベテラン、池田きぬさん(92)=津市久居新町。施設では、自分より年下の入居者を励まし、健康な暮らしを介護と医療の両面でサポートする。「互いに支え合いながら、長生きしたい」。戦時中に傷病兵をケアした経験もあり、命の大切さを誰よりも知る頼もしい存在だ。(大島宏一郎)

 「体調はどうですか」「部屋は寒くないですか」。昼食後の血圧測定の時間。サービス付き高齢者向け住宅「いちしの里」で、池田さんは車いすのお年寄りに歩み寄り、優しい口調で語りかける。統合失調症の症状のある女性(70)の手をさすりながら、表情や受け答えの様子から日々の体調を読み取る。

 1924(大正13)年、一志郡大井村(現在の津市一志町)で生まれた。41年3月に地元の女学校を卒業し、「自立して働くには手に職をつけなければ」と看護師の道を選んだ。その年の12月には太平洋戦争が始まった。

 最初の現場は、日本軍(当時)が療養所として接収した神奈川県内の旅館だった。19歳で傷病兵の看護要員として召集され、軍医の指示の下、栄養失調で結核を患った傷病兵の食事の介助をした。銃で撃たれた男性の腕から弾丸を取り除く治療にも携わった。「どんな状況下でも負けない精神力がついた」

 終戦の混乱の中、地元に戻り、47年から三重県内の病院の看護師や企業の保健師として働いてきた。「患者さんの体調が良くなったり、家族から喜ばれたりするのを励みとしてきた」。2人の子どもは義母に預けての勤務。85年に津市内の病院の総婦長、94年には県看護協会の役員も務めた。

 2000年の介護保険制度の導入に備え、99年に県内最高齢の75歳でケアマネジャーの資格を取得。「介護と医療の両面から患者を支えたい」との思いを胸に、12年11月から「いちしの里」で訪問看護師として働いている。

 週2回、自宅から40分、バスを乗り継いで通い、午前8時から午後5時まで勤務する。管を使って胃に直接栄養を流し込む胃ろうをしたり、糖尿病患者にインスリン注射を打ったり。同僚の看護師、岡野幸子さん(39)は「食事や睡眠など、入居者の生活習慣を頭に入れてケアに当たる池田さんの姿勢に頭が下がる」と話す。

 施設では高齢者50人が暮らす。入居する女性(88)は配膳作業で池田さんに食事を運んでもらったといい「元気な姿はとても励みになる」と笑顔を見せた。

 池田さんは「同世代だから会話も弾み、打ち解けられる。これからも共に励まし合いながら、親身になって寄り添っていきたい」と語った。

    ◇

◆60歳以上12万人
◆高齢化進む現場

 全国の医療・福祉現場では、看護師や助産師などの看護職の高齢化が進んでいる。厚生労働省によると、2015年時点で全国で働く看護職は約163万4200人。このうち60歳以上は約12万7000人で、04年の約4万3000人から3倍に増え、割合も3・6%から8・4%に急上昇した。日本看護協会の担当者によると、神奈川県の病院で90歳の看護師が働いている例はあるが、池田さんの92歳は「極めて珍しい」という。

 看護職の人手不足も深刻で、背景には「潜在看護師」の存在がある。同協会の調査によると、71万人が看護職の資格を持ちながら働いておらず、こうした人材の掘り起こしが急務という。担当者は「池田さんは看護師が長く働ける職業だと証明している。高齢化で働く場が広がっており、退職した看護師は再就職を考えてほしい」と話した。

入居者の血圧を測定する池田きぬさん=津市一志町の「いちしの里」で
入居者の血圧を測定する池田きぬさん=津市一志町の「いちしの里」で

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