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【健康】がん、認知症ネットで闘病体験語り 孤独和らげ、気づきも
2017/02/28
語る側も気持ちの整理に
乳がんや認知症などを患った患者や家族による体験談が、インターネットのウェブサイト「健康と病(やま)いの語り」で公開されている。当事者本人が、病気になってつらかったことや、治療に向けた自分の選択などを映像付きで語っているのが特徴。病とともに生きる人を励ます内容だ。 (出口有紀)
◇ ◇ ◇
ウェブサイトは、全国の医師や看護師、臨床心理士らでつくる認定NPO法人ディペックス・ジャパン(東京都中央区)が運営。乳がんと認知症、前立腺がんの三疾患を患ったり、大腸がん検診を受けたりした223人分の語りを載せている。
例えば、80代女性は「ご飯を食べたのを忘れるのが認知症で、自分はただの物忘れやって思っていた」と、認知症と診断された時の驚きを淡々と話す。
同じく認知症の50代女性は「診断直後は、奈落の底に突き落とされたような状態。看護師でも誰でもいいから『元気に暮らす方がたくさんいらっしゃいますよ』と、伝える人間が絶対に必要」と力を込める。
1つの語りは2分間ほど。患者の年齢や生活状況によって、病気の何が知りたいのか違ってくる。このため、治療法の選択、仕事への影響、周囲の人との関係などを、年齢別に選べるよう工夫されている。臨床試験、治験を経験した人の話もある。
同法人が取り組み始めたのは2006年。その後、厚生労働省の補助金を受けるなどして、対象疾患と人数を増やしてきた。体験談の収集や分析には、患者主体の医療を目指す英オックスフォード大の研究グループが開発した手法を取り入れた。
取り組みの目的について、事務局長の佐久間りかさん(57)は「ブログなどで闘病記は簡単に読める時代だが、患者同士で顔が見える関係が築きにくくなった。当事者の生の声を聞くと、孤独が和らぎ、病と生きる力にもなる」と指摘。病気になった時にどう対応するかは人によって異なるため、「迷っている人たちが、ふに落ちる道を見つけてもらえたら」と話す。
同法人は、撮りためた患者らのインタビュー映像を、医療職を目指す学生らの教育に活用してもらう取り組みも始めた。慌ただしい医療現場では治療が主眼になって、患者への配慮が欠ける場合があり、患者の思いを医療職に伝える必要性も高まっているためだ。15年度は、全国の医療系大学など47カ所の授業で、患者たちが語る映像が使われた。
佐久間さんは「医師の話とは異なる体験をする患者もいる。患者の声をどう臨床現場に生かしていくかも、当事者たちと模索したい」と話す。
ウェブサイトは「健康と病いの語り」で検索。
◆体験を語ることは、患者にも気持ちの変化をもたらす。
2003年に乳がんと分かった東京都町田市の主婦秋元るみ子さん(64)は、再発予防の放射線治療の影響でかかった肺炎で苦しんだ。取材時に担当者から「家族も大変ですね」と言われ、周りの人たちの存在を意識したという。「自分だけがひどい目に遭うと思っていたが、なんて自己中だったのか」と振り返る。
同じく乳がんの体験を語った荒川区の主婦吉田明子さん(58)は「がんと言われると、本人はすごく怖がり、周りもどうしていいか分からなくなることが多い。でも、がんと付き合う生活が始まるだけ。そこでおしまいではないと伝えたい」と言う。
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