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【医療】医人伝/治療後の生活の質重視

2017/01/31

 耳や鼻、口、喉は日常生活でコミュニケーションを取るのに極めて重要な器官。耳鼻咽喉科を「五感のうち三感を診る、患者の生涯にかかわる医療」と言う。顔面神経まひや聴神経腫瘍、耳管機能障害などの手術や治療を多く手掛けてきたが、治療後、患者の生活の質を低下させないことを目指す。患者の話に耳を傾けながら症状を入念に診察し、治療する。

 駆け出しの愛媛大時代、恩師の手術の技術に魅せられた。米スタンフォード大にも留学し、そこでも技術を磨いた。

 聴神経腫瘍の手術では、顔面神経や聴力に後遺症が残るケースもあるが、執刀した患者の多くがその機能を保っている。その保存率は、全国屈指の高い水準だ。耳管機能障害の治療では、先端機器を使わず、鼓膜にテープを張るだけの簡易治療法を開発し、現在、広く取り入れられている。

 病気の原因の研究でも、大きな成果を得た。顔面神経まひの六割はベルまひという疾患だが、その原因は長年、分かっていなかった。1980年代に出身の愛媛大で研究を始め、米国から帰国後の90年代に、水疱(すいほう)が生じるヘルペスウイルスが主な原因だと解明した。

 愛媛県今治市の瀬戸内海に浮かぶ大島で生まれ育った。戦国時代に水軍(海賊)で栄えた村上家の子孫という。10歳で、父親の転勤で大阪へ。医師に崇高なイメージを持ち憧れて、愛媛大に進んだ。卒業後は、同大病院など愛媛県内の3病院で治療経験を重ねた。

 「小さい病院だから、と腐ってはいけない。治療を多く経験でき、他診療科の医師とも交流が活発。担当科内だけで仕事をしがちな大病院より学ぶことが多い。これは若い人たちに伝えたい」

 愛媛で18年、名市大に教授の公募で移って18年。現在は耳鼻咽喉・頭頸(とうけい)部外科学教授として後進の育成にも励む。授業では、「引っ越しと転勤で培った処世術」も発揮し、例えやことわざを取り入れたり、ユーモアを交えたりして分かりやすさを心がける。「学生にとって一生の思い出に残る講義をしたい」

 日本耳科学会理事長など、多数の関連学会役員も務める。高齢者には、認知症やうつの発症につながる難聴を患う人が増えており、その対策にも取り組んでいる。 (室木泰彦)

顔面神経まひや聴神経腫瘍などの手術を多く手掛ける村上信五さん
顔面神経まひや聴神経腫瘍などの手術を多く手掛ける村上信五さん

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