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【医療】家族含め、心の苦痛ケア
2017/01/10
愛知県がんセンター中央病院(名古屋市千種区)
緩和ケア部長 小森康永さん(56)
病院内で開かれた「がんの家族教室」。「ホスピスに入るかどうか、家族からどう切り出したらよいでしょうか」。終末期の過ごし方について解説した後、参加者からこんな質問が出されると、丁寧に回答した。終了後は、生活上の課題などの個別相談にも応じた。
緩和ケア部門の責任者だが、担当するのは身体的な痛みの制御だけではない。がんの専門知識を持つ精神科医「精神腫瘍医」として、患者や家族の心の苦痛をやわらげる。家族教室はその一環として2015年に始めた連続講座で、患者の家族にがんの基礎知識を学んでもらう。
がんと診断された人は、手術や放射線などの治療がいったん終わっても、再発の不安が付きまとう。このため、治療中だけでなく、がんと診断されたことがある人全てを「がんサバイバー」と呼び、ケアの対象とするようになっている。「家族は共同治療者として、支え続ける。しかし日本では、身近な人ががんだと分かって精神的に落ち込む『第二の患者』と呼ばれ、治療の対象としてしか扱われてこなかった」と教室の狙いを説く。
岐阜県美濃市出身。岐阜大医学部を卒業後、小児科へ進んだ。家族を支援する視点はこのころからだ。当直の深夜、しばしばぜんそくの発作を起こした子どもが両親に連れられてきた。心掛けたのは診察後の両親への声掛けだ。
病気の子どもにかかりきりで、きょうだいがほったらかされていないか。家族全員に目配りをするようアドバイスすると、両親に心の余裕が生まれ、それが病気の子どもにも良い影響を及ぼすことを体験してきた。
小児科で10年働いた後、精神科に移った。「病気そのものの研究や治療より、病と闘う人たちの生きざまに関心があった」からだ。愛知県立城山病院(現県精神医療センター)に勤務中は、統合失調症への理解を深めるために病気を擬人化した人形劇を創作するなど、患者や家族への教育に工夫を凝らした。
「趣味は翻訳」と言うほど、海外の論文の邦訳にも力を入れる。いま手掛けているのが「近代ホスピスの母」と呼ばれる英国のシシリー・ソンダース医師の論文集の翻訳。「緩和ケアに携わる者なら、知っておくべきことが書いてあり非常に示唆に富む。出版してその精神を広く知ってもらいたい」と語る。(稲田雅文)
- 「がんの家族教室」を開いて精神的な支援をする小森康永さん
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