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【医療】基礎研究の魅力若者へ 見学ツアーや実験講座

2016/06/14

愛知県がんセンター研
役割、意義を紹介志望者減少に歯止め

 顕微鏡をのぞくと、緑色に光るマウスの肺が鮮明に浮かび上がる。この顕微鏡は「蛍光実体顕微鏡」。細胞が緑色に光る遺伝子を組み込んで、がん細胞の性質を調べる研究で使われている。参加者たちからは「この顕微鏡は日本でも少ないのか」「どのくらい小さなものまで見えるの?」と、質問が上がった。

 5月中旬に開かれた愛知県がんセンター研究所の見学ツアー。県内外の十代から高齢者まで29人が参加した。3班に分かれ、分子病態学部主任研究員の佐久間圭一朗さん(43)ら研究員3人の案内でレーザー顕微鏡で撮影したタンパク質を見たり、免疫で死んだがん細胞を確認したりした。

 がん転移のメカニズムを研究する佐久間さんは「すぐに治療に役立つわけではない。でも、小さな成果を積み重ね、新薬の開発につなげることが目標」と、研究の意義を説明。参加した名城大薬学部四年の男子学生(24)は「最新の機器や研究を具体的に教えてもらえて分かりやすかった。研究者を目指したいという気持ちが湧いた」と話す。

 1964年に設立された愛知県がんセンターは中央病院と研究所(名古屋市)、愛知病院(同県岡崎市)で構成。研究所はこれまで日本のがん研究をリードする多くの大学教授らを輩出。現在も近隣の医学系、薬学系の大学院と連携し、研究者を育てている。

 ツアーは2004年から公開講座に合わせて開いてきたが、研究の役割をより知ってもらおうと初めて単独で開催。高校生向け「基礎実験体験講座」もあり、今年は8月3日に細胞ががん化する様子を観察する。田中英夫疫学・予防部長は「若い人が研究職を目指すきっかけに」と期待する。

 文部科学省によると、医学部を卒業し、医師免許取得後に医学系大学院(博士課程)で基礎を学ぶ学生は03年度に404人だったが、08年度には288人と3割減少。田中さんは「基礎研究者が減れば、新しい治療法が生まれず、医学教育の後退にもつながる」と懸念する。

 理由の一つが、04年度に始まった診療に当たる医学部卒業生への2年間の臨床研修の必修化。基礎に関心があっても、将来、臨床医になる可能性があれば研修を受けなくてはならず、研修中に臨床にやりがいを感じ、そのまま臨床医になる学生も多い。また、研修先を学生が選べるようになって大学病院以外を選ぶ学生が増えたため、大学病院では人材が不足し、臨床医が大学院で研究する余裕もなくなっている。

 このため、大学の医学部でも早い段階で研究に興味を持ってもらう取り組みが進む。名古屋大は、1年生から複数の基礎の研究室をまわり、教授の話を聞く「ラボツアー」を導入している。興味を持った研究室では夏休みに研究を体験することもできる。

 医学部は6年間の課程だが、4年を終えた段階で大学院に〝飛び級〟し、博士号を取得後に学部に戻ったり、2年目の臨床研修と並行して大学院で学べたりするコースもあるほか、独自の奨学金も用意。新たに大学院で基礎医学を選ぶ学生が1人もいない年もあったが、本年度は6人(30歳以下)となった。高橋雅英医学部長は「研究への夢を与え、良い環境を整えることが大切」と話す。

      ◇

 愛知県がんセンターの高校生講座は同県内の高校生対象で定員14人。【問】同センター=電052(762)6111

 東海地方のがんの研究拠点「愛知県がんセンター研究所」が毎年、市民の見学ツアーや高校生向けの実験体験講座を開いている。病気の原因を究明したり、新しい治療法を開発したりする基礎医学の研究者を志す若者が減る中、その魅力や大切さを広く知ってもらう狙いだ。名古屋大も基礎の魅力を学生に伝える試みを実施。医療界に〝研究者の卵〟を育てる取り組みが広がっている。 (寺本康弘、山本真嗣)

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