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【医療】医人伝/医療通訳者養成に尽力
2016/06/14
日本を訪れる外国人が急増し、病院で医師らとのやりとりを助ける医療通訳が重要になっている。今春、藤田保健衛生大の大学院修士課程にできた医療通訳の指導者養成コースの教授に就いた。
東京都出身。早稲田大商学部を卒業後、NHKのニュース番組でキャスターを務めた。その後、英語とスペイン語の通訳として活躍し、夫の転勤で男児2人も連れて1989年からチリで5年半生活。この時の体験が今につながる。
高熱に浮かされる子どもに現地の病院がした処置は、水風呂に漬けること。抗生物質も処方しなかった。驚き抗議したが、「治療の邪魔」と一蹴された。冷静になって話を聞くと、チリでは原因菌が分かるまで抗生物質を使わないのが普通。水に漬けるのも普通の療法だった。「慣習や文化が国によって違う。専門の医療通訳の必要性を感じた」と振り返る。
帰国後の95年、阪神大震災が発生。被災地で医師が外国人に十分対応できない状況を知った。駆けつけて通訳したかったが、子ども2人を放って行くわけにいかない。「君たちが大きくなったら、日本でプロの医療通訳者がしっかり働けるように頑張るね」と約束した。
子育てが一段落した99年、日本国際協力センターの非常勤研修監理員に。国際協力機構(JICA)の医療技術研修で、研修のため来日した外国人の通訳を10年余り担当した。同時に、米国で創設された医療通訳者の国際組織「IMIA」に参加。米本部役員や日本支部長を務め、公的認定試験がない国内の遅れを痛感した。「日本もボランティアの医療通訳者は増えたが、立場が不安定。病院運営側の一員になり報酬を得て自立できる専門通訳者が必要。資格者を増やさないと」。厳格な国際認定試験に日本語が含まれるように準備を進めている。
6年前から大学や市民講座で講師経験を積み、東京外国語大大学院などで養成のあり方を研究。育児などで仕事を離れた外国語が得意な中高年者に、医療通訳を行う意欲がある人が多いと知った。一方、志願者でも患者の出身国の文化を理解する大切さを意識する人が少ないと危ぶむ。「外国人を雇う企業が多い東海地方は医療通訳のボランティア活動が活発。今後は質を高めるため文化まで理解するプロを増やしたい」 (室木泰彦)
- 医療通訳への思いを語る竹迫和美さん
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