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中日新聞 医療NEWS

【暮らし】ホンネ外来 発/喪失感、心残りに共感

2016/05/31

「みるみる衰弱入院悔やむ」に反響

「グリーフケア」遺族で語り合い楽に

 配偶者や親ら身近な人をなくし、強い心残りに苦しむ人は多い。4月5日付の「ホンネ外来 発」では「夫を入院させたところ、最後はろう人形のようになって亡くなった」という中部地方の女性(80)の手紙を紹介。読者から「悲しみさえわかない。もっと私がみたかった」と、深い喪失感を抱く女性への共感などの手紙が寄せられた。大切な人の死をいかに乗り越えるか。その取り組みを取材した。 (稲熊美樹)

 毎月、がんで家族を亡くした人たちが岐阜市内で集う「なのはな会」。4月下旬に開かれた会には、配偶者を亡くした50~60代の男女9人が集まり、話したいことがある人が順番に思いを語っていった。

 「本当は、まだお骨はそばに置いておきたいんです」。2年ほど前に夫を亡くした女性(53)が、お墓に遺骨を納めるべきかどうか、悩みを打ち明けた。すると、他の参加者たちは「まだお墓に埋めなくてもいいのでは」「あなたの気持ちを優先させればいいのでは」などと声を掛けた。女性は落ち着いた様子になり「ここは心のよりどころ。同じ境遇の人がいて、自分は1人じゃないと心強くなる。月に1度の会が楽しみ」と話した。

 同会の下和田由美会長(54)も、夫を亡くした。思いを語り合いたいと、3年前に会を設立した。「常連さんも増え、分かり合える人たちに出会えた。つらくなったら、ここで愚痴をこぼしてほしい」と話す。

 こうした遺族会などの遺族支援の活動は、日本では「グリーフ(悲嘆)ケア」と呼ばれる。その研究で深い悲嘆の原因になりうるとされているのが、心残りだ。関西学院大(兵庫県西宮市)人間福祉学部の坂口幸弘教授らが、ホスピス病棟で亡くなった患者の家族約五百人を対象に2004年に実施した調査によると、心残りが「非常にある」「少しある」と答えた遺族は計88・7%に上り、回答者の3割は、2年以上たっても心残りが「非常にある」と答えた。

 心残りの理由は「故人の年齢が若すぎた」「体の異変に早く気付いてやれなかった」「定期的な検診をもっと勧めておけばよかった」などが上位。「亡くなる前にもっと話をする時間がほしかった」「元気なときにもっと優しく接してあげればよかった」といった声も目立った。

 坂口教授は「遺族にとって、心残りはごく自然な心情」と指摘。ただ、長期にわたって深い悲嘆が続く「複雑性悲嘆」は、精神疾患につながり、治療が必要になることもある。

 遺族会では、他の遺族に気持ちを打ち明けたり、他の遺族の気持ちを聞いたりという活動がされている。「自分だけじゃない」と分かると、気持ちが楽になるという。

 心残りが事実誤認に基づいていることもあり、客観的な事実を確認することで、気持ちが落ち着くこともある。坂口教授は「疑問に思っていることがあれば、周りの人に聞いてみてもいい。しばらく時間がたってから当時の状況を客観的に振り返ると、医療者の態度や言葉を違うように受け止められるかもしれない」と話す。

 心のケアだけでなく、人生を立て直すための支援も必要だ。相続にかかわる法律問題などには、具体的なアドバイスや情報提供が役に立つ。食事作りを故人に任せきりだった場合には、遺族が通える料理教室を紹介するなど、必要な支援は人それぞれだ。

 ただ、こうした支援は、すべての遺族に必要なわけではない。「選択肢がたくさんあり、必要な人が必要な支援を受けられるようになるのが理想」と、坂口教授は話している。

◆自分がしっかりしていれば…
◆妻介護の男性自責の念

 4月5日付の「ホンネ外来 発・みるみる衰弱 入院悔やむ」を読み、3月に妻=当時(77)=を亡くしたという愛知県の男性(79)は、「自分がもっとしっかりしていれば」と、自責の念をつづり、本紙に寄せた。

 男性は、9年間にわたって妻を介護。3月のある日の夜中、「お父さん!」という大きな声で妻の元に駆けつけると、電気毛布の温度が上がりすぎて、汗をかいていた。

 駆けつけた訪問看護師に相談すると「大丈夫」と言われ、朝まで眠った。しかし、午後に容体が急変。翌日、病院で亡くなった。

 男性は、妻が亡くなってから、強い自責の念にかられるとともに、「もっと早く、訪問看護師が受診を勧めてくれていたら」という悔しさも感じている。現在は、妻をみとった病院で精神科の受診を勧められて服薬し、少し落ち着いてきているという。

がんで家族を亡くした人が語り合う「なのはな会」。一人一人の話に、全員で耳を傾ける=岐阜市内で
がんで家族を亡くした人が語り合う「なのはな会」。一人一人の話に、全員で耳を傾ける=岐阜市内で

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