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【医療】緩和デイケアで 生きる力再び 病との付き合い方学ぶ場に

2016/05/03

がん患者の悩みに専門家ら助言

 がんによる心身の苦痛を和らげる緩和ケアを、在宅の患者が日帰りで受けられる「緩和デイケア」という取り組みが始まっている。医療スタッフの支援を受けながら、患者たちが交流や創作活動などをする。終末期だけでなく、診断早期から患者たちが訪れ、がんとの付き合い方を学び、自分らしく生きる道をみつけている。 (山本真嗣)

 ◇ ◇ ◇

 「上をむーいて、あーるこおーう」

 名古屋大大幸キャンパス(名古屋市東区)の一室に明るい歌声とギターの音色が響いた。歌ったり演奏したりしているのはがん患者たち。乳房や胃、大腸などがんがある部位や症状、通う病院もさまざまだ。

 毎週水曜に開かれる「ライフトピアサロン」。同大大学院医学系研究科特任准教授で看護師の阿部まゆみさん(64)が8年前に始めた。参加者は、がん患者や家族らががんについて学ぶ市民講座「ライフトピアスクール」の修了生。がんの経験を語り合い、絵画や折り紙、音楽といったプログラムに取り組む。阿部さんら専門家に悩みを相談したり、痛みを和らげるマッサージを教わったりすることもできる。

 阿部さんによると、入院が短期化し外来治療が中心となる中、がん患者は一人で心身ともに苦しみを抱えがちだ。

 この日、笑顔で歌った名古屋市の主婦(55)は月2回ほど参加する。8年前、進行した大腸がんが見つかり、手術後も体調不良と再発の恐怖に苦しんだ。大学受験前の息子に家事を手伝ってもらわなければならず、「自分がお荷物になっている」と悩んだ。

 1年後にサロンに参加。悩みを打ち明けると、他の患者が解決法をアドバイスしてくれた。皆、できる範囲で今を楽しんでいる姿に勇気づけられた。もともと、人前で歌うことは苦手だったというが、サロンの合唱が楽しくなり、シニアミュージカル劇団に入団。昨年は舞台に立った。「普通に生きる自信を取り戻せた」と話す。

 サロンの会員は現在、愛知や岐阜県などの30~70代の約60人。無料で、毎回5~10人が参加。職場復帰した人や会員同士でバンドを組んだ人もいる。

 サロンの原型は阿部さんが20年ほど前に働いていた英国の「聖クリストファーホスピス」。苦痛を取り除きながら穏やかに終末期を過ごす世界初のホスピス(緩和ケア病棟)で、当時から英国ではホスピスには必ず、日帰りのデイケア施設が併設されていたという。

 そのころ、国内では緩和ケア病棟も少なかった。阿部さんは帰国後、赴任した広島県の病院で2004年ごろ緩和デイケアを実践。それをモデルとして、全国の病院に広がっている。

 愛知県がんセンター愛知病院(岡崎市)では毎週火、木曜に、外来の一環として一日3時間ほどのデイケアを開催。ヒノキの香りに包まれた部屋で栄養士や薬剤師、理学療法士ら専門職がかかわり、患者の相談に応じる。昨年は延べ約870人が利用。橋本淳・緩和ケア部長(49)は「早期からがんの不安や痛みを除き、その人本来の力が出せるようにする」と話す。

 課題は費用と人材の確保だ。緩和デイケアに特化した診療報酬はなく、スタッフをそろえて態勢を組む医療機関はまだ少ない。

 阿部さんは医療関係者を対象にした人材育成セミナーも年2回開催しており、これまでに約590人が受講。「『がん=死』ではない。生きることに伴走できる多職種の人材を育てたい」と話す。

      ◇

 人材育成セミナーとライフトピアスクール 次回セミナーは6月25、26日、名古屋大大幸キャンパスで。無料。スクールは同キャンパスで6月25日に開講し、年4回で受講料は2000円。1回でも1000円で参加できる。申し込みが必要。問い合わせは、セミナーは阿部さん=電052(719)1948、スクールは事務局の黒川さん=電052(719)3158=へ。

ギターの伴奏に合わせ「上を向いて歩こう」を歌うがん患者ら=名古屋市東区で
ギターの伴奏に合わせ「上を向いて歩こう」を歌うがん患者ら=名古屋市東区で

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