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【社会】女児 移植かなわず脳死、臓器提供

2016/01/10

命のリレー 足跡永遠に
経験語り1年 両親「娘が活躍」

 2歳になる次女を寝かしつけながら、ふと亡くなった長女の顔が重なる。母親(39)はいつも心の中で「大好きだよ」と語り掛けてきた。大阪大病院で昨年1月、心臓移植を待ちながら脳死となり、臓器提供した6歳未満の女児が亡くなってから13日で1年。「悲しみは今も近くにある。でも、移植を受けた人が喜んでいる姿を見ると、良かったと思う」。東海地方在住の両親が、胸の内を語った。(中崎裕)

 ◇ ◇ ◇

 黄色やピンク色の小さな手形と足形が飾られた部屋には、好きだった人気アニメやディズニー映画の縫いぐるみが並ぶ。「ふいにすごく悲しくなることがある。あらゆる所に娘の思い出がありますから」。父親(35)は毎日、生前の姿を思い出す。

 長女は一昨年10月、かぜのような症状から心臓のポンプ機能が弱まる難病の拡張型心筋症と診断された。約2カ月後には補助人工心臓が必要に。海外で使われている子ども用の機器が日本では未承認だったため使えず、血栓ができる恐れがある簡易な機器を使用中に脳梗塞を起こし、脳死判定を受けた。海外での移植が決まった直後だった。

 子どもの国内での移植例が少なく、医療機器の承認が遅れていることを痛感した闘病生活だった。同じことが起きないようにと、直後からマスコミの取材に応じ、使えなかった機器の早期承認や移植への理解を訴えた。母親は「入院前やその後のことを思い出して何度も話すのはつらく、すごく精神的に落ち込むこともありました」と振り返る。

 そんな中、移植を受けた人や提供者の家族らによるNPO法人の集いに参加し、海外での移植を受けた幼い子どもや家族と出会った。「感染症対策のマスクをしている以外は元気な子と変わらない姿を見て、素晴らしい医療だと思った。1年たっても、提供を選んだことに間違いはなかったと思う」。父親はそう実感してきた。

 日本臓器移植ネットワークを通じ、腎臓の提供相手の女性からもらった手紙には「毎日なでて大切にしている」と書かれていた。長女の肺を移植された子どもが元気にはしゃぐ姿もテレビで見た。「きっとこれまで走れなかったと思う。その子や家族に会いたいとは思わないし、娘が生き続けているとか、受けた人に何かを押しつけるつもりはない。ただ、娘の一部が活躍しているなと思えた」という。

 移植は心理的な負担の懸念などから、提供者と受けた人がお互いに分からないよう匿名が原則となっている。だが、それ故に脳死や移植の実情が「オブラートに隠されている」と感じる。心不全の学術大会に手記を寄せ、講演で経験を語るなど、できる範囲で移植への理解を広げようと努めてきた。

 この1年で、長女が使えず、早期承認を訴えてきた補助人工心臓は異例の早さで使えるようになった。臓器提供のニュースも増えたように思う。「移植が普通になってほしい。事実を正確に語ることが、生きていく中での役目なのかな」。語るつらさも経験したが、母親はそう思っている。

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