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【暮らし】注目の「がん哲学外来」 患者と家族の不安解消

2015/08/04

 対話を通じ、がん患者とその家族の不安や悩みを解消する「がん哲学外来」が全国に広がっている。全国約80カ所で定期的に開かれ、患者らがグループでお茶を飲みながら、自由に対話するカフェ形式もある。がん患者の心のよりどころになると期待されている。

 ◇ ◇ ◇

 7月初め、東京都中央区銀座。3カ月ごとに開かれる民間企業主催の「がん哲学外来メディカル・カフェ」には、患者をはじめ、再発の不安を抱える人、患者家族、医療関係者ら25人が参加した。

 東海大医学部血液・腫瘍内科教授の安藤潔さん(58)が、視察した英国のホスピス事情について報告。キリスト教文化のある英国に比べ、日本は先進国の中でも社会的孤立度が高い国であると指摘し、「無宗教で社会的ネットワークが希薄な日本では、死への恐怖や生きる意味を見失う患者が少なくない。がん哲学外来は、そんな苦痛の緩和に役立つのでは」と話した。

 講演の後、参加者は6グループに分かれて自由に話し合った。「告知の直後は、いろいろやらなきゃと焦ったが、最近どうしていいか分からない」と言う女性に、周りがうなずいた。「家族には本当の気持ちが言えない」「がんは、『頑張りすぎる』のがん。他の人のことを優先して、自分のことを後回しにしてきた人が多い」などと、それぞれの思いを吐露。話し合いが終わると、各グループで出た意見を発表した。

 別室では、安藤さんによる個人面談も並行して行われ、ある女性は「先生にお話ししてよかった」と晴れ晴れとした表情を浮かべた。

 「がん哲学外来は、医療の隙間を人間力で埋める対話の場。問題は解決できなくても、問題の優先順位を下げ、解消することはできる」

 順天堂大医学部教授の樋野興夫(ひのおきお)さん(61)によるこんな思いから、2008年に始まった。

 当初は医学部付属順天堂医院(東京都文京区)で、患者やその家族と1時間ほど話す5日間限定の取り組みだったが、予約が殺到しキャンセル待ちが80件出た。その後、院外に取り組みを広げた。

 参加者は、治療や再発に対する不安のほかに、夫婦関係や職場の人間関係などで悩みを抱えていることが多く、悩んだ末に自殺未遂したことがある人も。

 樋野さんは参加者の悩みに耳を傾け、自分が若いころ読んだ新渡戸(にとべ)稲造や内村鑑三らの本から、その患者に適切と思える言葉を「処方箋」として引用しつつ対話。「人生に期待するから、失望に終わる。人生から期待されていることの認識が大切」「人にはどんな時にも役割がある」と説く。

 がん哲学外来は、主に情報提供や傾聴に徹する院内の「がん相談窓口」、医療者がサポート側に回る「患者会」、薬などで治療する「精神腫瘍科」などとは目的が異なる。

 全国に取り組みを広げている一般社団法人「がん哲学外来」は、今後7000カ所での開催を目指している。樋野さんの思いに賛同した各地の医師や看護師、患者、宗教家らが養成講座を受け、それぞれのやり方で患者に寄り添う。

 各地の連絡先は、がん哲学外来=電03(3288)2887=か、法人のホームページで。

(砂本紅年)

東海大医学部教授の安藤潔さん(右)の話に耳を傾けるがん患者ら=東京都中央区銀座で
東海大医学部教授の安藤潔さん(右)の話に耳を傾けるがん患者ら=東京都中央区銀座で

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