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【医療】中部の最前線/重度の心身障害児 在宅医療支援進む岐阜県

2015/07/28

人材育成―相談所―短期入所制度

 重度の心身障害がある子どもが、安心して在宅で生活するには、どんな施策が求められるのか。岐阜県は、障がい児者医療推進室を中心に、医療と福祉の両面から障害がある子どもを支援している。障害児医療を担う人材育成などを進め、全国的にも先進的な取り組みとして注目されている。(稲熊美樹)

 「こんにちは。お邪魔します」。県庁から車を走らせて15分ほど。7月半ば、障がい児者医療推進室の都竹(つづく)淳也室長(48)がある家を訪れた。

 この家で暮らすのは、24時間、人工呼吸器が必要な種田杏(あん)ちゃん(5つ)の家族。都竹さんは家に上がると、訪問看護サービスで入浴していた杏ちゃんの頭をなでて「また大きくなったね」と声を掛けた。

 杏ちゃんは出産時に低酸素性脳症に。寝たきりで、3時間ごとのたんの吸引が欠かせない。具合の悪さを自分から周囲に伝えるのも難しい。母の真希さん(40)が、わずかな不調も見逃さないよう、四六時中付き添って生活している。

 都竹さんはこれまでに真希さんからいくつかのヒントを得たという。この日も、「人工呼吸器の扱いは難しい。いろいろな種類の呼吸器の使い方を学ぶ機会があれば」と言う真希さんに、「保護者だけでなく医療関係者も集めてやるといいかもしれない。すぐ検討します」と答えた。

 都竹さんが初めて種田家を訪れたのは、1年半ほど前。都竹さんが同室に異動して9カ月ほどがたったころだ。真希さんが、血液中の酸素飽和度や心拍数を測定する装置の数値を注意深く見て、杏ちゃんの体調だけでなく、機嫌までも理解していると知った。「数字も使って感情を読み取っている。杏ちゃんを大切に思う母の気持ちに感動した」と振り返る。

 真希さんも初対面のときから都竹さんを信頼し、知り合いの重症心身障害児を紹介した。都竹さんは、同室の職員とともにこれまでに10人ほどの自宅を訪れてきた。ほかにも、県内外の病院や大学、施設、重症心身障害児の親の集まりなどにも足を運ぶ。「現場はヒントの山。現場を見ていることが強み」と胸を張る。

 同室は、以前の総合療育推進室から昨年、発展させた。都竹さんを室長に現在、職員5人が障害児支援に奔走する。都竹さんが同室に異動した当初、同室の最重要課題は今年9月に予定されている「希望が丘こども医療福祉センター」(岐阜市)の開設に向けた準備。心身障害児が入所するだけでなく、在宅の障害児たちが短期入所するサービス(レスパイト)などもする障害児療育の拠点だ。

 センターの施設計画は既にできており、整備も順調に進んだ。しかし、在宅の重症心身障害児は多く、入所施設整備だけでは足りないと感じた。そこで、重視したのが在宅を含めた障害児医療を担う医師や看護師の育成だ。まずは、岐阜大と連携して障害児医療を学ぶ寄付講座を開設。さらに、現場の看護師に専門知識を1年間かけて学んでもらう研修制度や、実技講習も整えた。

 レスパイトの充実にも取り組む。保護者からの要望は多いのに利用が増えない理由を探ると、やはり技能を備えた看護師不足が響いていた。そこで多治見市民病院の空き病床を利用し、ベテラン看護師の指導を受けて非常勤のレスパイト専任看護師が子どもをケアする取り組みも始めた。

 新生児集中治療室(NICU)から在宅への移行支援も重要度を増している。退院後の生活基盤を整える準備がうまくいかない場合などの相談先として、「重症心身障がい在宅支援センターみらい」を設立。外出しづらい親子の孤立化予防にもつながっている。

 全国の小児在宅医療の現状に詳しい国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)総合診療部在宅診療科の中村知夫医長によると、短期入所の病院で訪問看護師がレスパイトのケアを担うサービスや、困ったときの相談先を明確に示した「みらい」のような取り組みは、全国的にも珍しいという。中村医長は「現場で困っていることを確認し、課題を施策につなげる姿勢がすばらしい」と評価する。

杏ちゃんを入浴させながら、母親の真希さん(右)らと意見を交わす都竹さん(中)=岐阜市内で
杏ちゃんを入浴させながら、母親の真希さん(右)らと意見を交わす都竹さん(中)=岐阜市内で

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