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【三重】がんゲノム医療 三重大、拠点病院に「副作用出にくい」
2020/01/14
がん患者の細胞を調べ、遺伝子レベルで効果的な薬を探る「がんゲノム医療」で、三重大が厚労省の拠点病院に指定された。治療が難しいとされてきたがんが大幅に改善するケースがある一方、現状では効果を得られる患者は約1割に限られる。医師らは「丁寧に説明し、効果のある患者に最新の治療を届けたい」と話している。 (森耕一)
◇ ◇ ◇
がんは生活習慣や加齢、遺伝によって細胞の遺伝子が傷つき、細胞が自分勝手に増殖するようになることで発症する。標準的な治療では、がん細胞を切除し、細胞の増殖を抑える抗がん剤を使用する。ただ、抗がん剤は体中の細胞の増殖を抑えるため強い副作用をもたらす。また治療の難しい臓器もある。
ゲノム医療は、今世紀になって大幅に進歩した遺伝子解析技術で生まれた。患者の腫瘍のがんに関連する100種類以上の遺伝子を調べ、どこに変異があるかを特定。その変異によって起こる変化だけを抑える「分子標的薬」を投与することでがんの進行を止める。
三重大で新拠点を統括する中谷中(かなめ)教授は「がんの増殖ではなく、原因の根本を抑える。がん特有の変化に作用するので、体の他のところへの副作用も出にくい」と意義を強調する。
国は昨年、標準治療で効果が出ない患者について、遺伝子検査を保険診療の対象とした。一昨年にはがんゲノム医療の中核拠点病院として国立がん研究センター中央病院など11施設を、昨年9月には三重大など34施設を拠点病院に指定し、新治療を推進する。
三重大では2017年から患者の自己負担でがん遺伝子検査を始め、若手を中心にゲノム解析や分子標的薬に詳しい医師の育成を進めてきた。昨年12月には保険適用で初の検査を実施し、今後は月に10~20人の検査を計画している。
ただ現状では、遺伝子の変異が見つかっても、対応する薬があるケースは一割程度。また、大半のケースでは保険が適用されるのは検査だけで投薬治療は自己負担となる可能性が高い。同大では薬の臨床試験に参加してもらうなど、患者の費用負担を抑えることも目指す。
中谷教授は「(現時点では)『夢の治療』ではないが、研究は急速に進んでおり、数年後には治療できる範囲は広がる」と見通す。旧紀和町(熊野市)出身で、最新治療を県内でも受けられるようにすることが信念。「まずはがんゲノム医療を知ってもらいたい。ネット上には不正確な情報が多い。主治医や三重大の遺伝カウンセリング外来に相談して」と呼び掛ける。
- 「まずは主治医などに相談を」と話す中谷教授=津市の三重大で
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