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【暮らし】看病のママに「料理の缶詰」 NPOが小児病棟へ無償提供
2019/11/14
長期入院中の子どもに付き添う家族を食事面で支援しようと、東京のNPO法人「キープ・ママ・スマイリング」が野菜たっぷりの手作り料理を缶詰にし、全国の小児病棟を対象に無償で配る取り組みを始めた。付きっきりで体調を崩しがちな家族の環境改善を目指し、受け入れ先を募っている。
同NPOは入院中の子どもの付き添い経験のある母親らで2014年に発足。管理栄養士やレストランのシェフと協力し、都内にある患者や家族の滞在施設や小児病棟を定期的に訪れ、手作りの食事や弁当を無償提供している。
同NPOの光原ゆき理事長(45)によると、治療や後遺症、障害などで長期入院が必要な子どもに泊まり込んで付き添う親も多い。だが、子どもから目が離せず、食事はおにぎりやカップ麺などで済ませ、体調を崩すケースも少なくない。管理栄養士で、東京医療保健大講師の細田明美さん(44)らが昨年、付き添いの保護者に行った調査では、回答した約80人の7割が野菜不足と感じていた。
光原さんも6年前に生後6カ月の次女が心臓の手術を受けた際には2カ月付き添った。次女は光原さんの姿が見えないと泣くため離れられず、売店のパンばかり食べていた。病院近くの飲食店で店主に話すと、病棟まで毎日弁当を運んでくれた。次女は11カ月で亡くなったが、友人が3食を作ってくれ、「おいしいご飯は、どんな言葉よりもつらさを癒やしてくれた」。
「子どもが元気になるために、親も元気になってほしい」と寄付金を募り、食事の提供を開始。ただ、病院に提供を申し出ても「衛生面で難しい」と断られることもあり、安全性に配慮した缶詰を思いついた。
缶詰は「にんじんとオレンジの食べるスープ」「大豆ミートのキーマカレー」「豚肉のりんご煮」「ニシンの野菜ソース煮」の4種類。野菜や果物、肉、魚などを使い、不足しがちなタンパク質やビタミン、食物繊維などを補える。おにぎりやカップ麺などの「コンビニ食」と組み合わせると、バランス良く食べられる。
都内の米国料理店料理長で、NPO発足当初から協力している米沢文雄さん(39)がレシピを考案。「素材を生かした優しい味わい。ハーブや香辛料を使い、味に深みを出した」という。
日本財団の助成金を使い、障害者の就労支援施設に委託して計4000個を製造。長期入院の子どもが多く、配布に協力してもらえる病院などに無償提供している。食事や弁当を提供している国立成育医療研究センター内の宿泊施設「せたがやハウス」や聖路加国際病院(いずれも東京)などで4月から、佐賀大病院でも今月から配布を始めた。
NPOが今春、付き添い経験のある約220人に行った調査では6割が体調を崩し、半数以上が経済的な不安を感じていた。同大小児科の松尾宗明教授(59)は「家族の負担は大きく、缶詰が励みになれば」と話す。
今後も缶詰生産を続ける予定で、来年以降企業に「備蓄食」として販売。入れ替えを本来の期限より早めて小児病棟へ缶詰を寄付してもらうなどし、継続して支援できる仕組みを目指す。問い合わせはホームページ(「キープ・ママ・スマイリング」で検索)から。
(吉田瑠里)
- 「キープ・ママ・スマイリング」が開発した4種類の缶詰
- 聖路加国際病院に届ける弁当を作る光原さん(右端)ら=東京都中央区で
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