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【ホンネ外来発】男性の看護どう思う?
2019/06/04
「婦人科は嫌」投稿に反響
◆事前の了解得て/複数での対応を
投稿を寄せた愛知県の女性は、子宮筋腫のため、総合病院で子宮摘出の手術を受けた。若い男性看護師が担当に付き、術前の浣腸(かんちょう)のほか、術後は毎日、下着を下げた状態で、下腹部の傷口や排尿の管の状態をチェックされた。驚いたが「性別だけで拒否するのもどうかと思って我慢した。せめて担当が男性だと事前に知らせてくれれば」という。
これに対し、多かったのは「デリケートな部分の処置は同性がいい」という女性たちの声だ。その一人、同県の女性(70)は「(入浴や下の世話など)看護の場面によって男女の向き不向きはある」という意見。女性は昨秋、交通事故で総合病院に40日間入院した。自力で動けなかったため、入浴に介助が付くことに。担当になったのは若い男性看護師だ。「私でいいですか」と聞かれ、「女性がいい」と代わってもらった。「看護師からすればおばあちゃんかもしれないが、男性の前で裸になるのは抵抗がある」と振り返った。
一方、男性からはこんな声があった。「相手が異性でも同性でも、2人きりで裸を見られるのは嫌。複数で担当してほしい」と書いてきたのは、名古屋市中村区の男性(46)だ。心疾患の手術の際、自分で鼠径(そけい)部をそり、女性看護師2人に確認してもらった。「1対1だと緊張したと思う。2人いてくれたので羞恥心が和らいだ」という。
男性医師の立場から投稿者に理解を示す人もいる。名古屋市緑区の岡田内科クリニック院長、岡田源義(もとよし)さん(62)は「羞恥心の感じ方は人それぞれ。男と女では体の構造も違う。男性の看護を受けたくないというのも権利の一つ」。
自身のクリニックに男性看護師はいないが、岡田さんが女性患者の心電図を取るときや治療で陰部を見るときなどは、必ず女性看護師が立ち会う。患者が子どもの場合でも同じだ。
男性看護師の増加については「男女は同権だが、果たす役割は必ずしも同じではない」。その上で「看護師は患者の体の全てに触る可能性がある。嫌でも声を上げられない患者もいる」として、医療機関側の配慮を呼び掛ける。
◆数増え活動の場拡大 職場の環境整備も課題
男女共同参画社会の推進によって、看護士、看護婦と男女で異なっていた名称が、「看護師」に統一されたのは2002年。日本看護協会によると、准看護師を含む全国の男性看護師は16年末時点で10万6333人。全体に占める割合は6%だが、ここ10年で2・3倍に増えた。
かつて男性看護師の職場といえば、救命救急や精神科などが多かった。患者を移動させる時や暴れた場合の対応に、体力のある男性が歓迎されたためだ。婦人科などで働く男性看護師が出てきた背景には、数が増え勤務する診療科が広がったことがある。
同協会によると、男性看護師向けに行動指針などを記したものはない。男性看護師はどんな姿勢で臨んでいるのか。愛知県内の総合病院で管理職を務める男性看護師(44)は「女性患者に同性を希望されたら、できる限り添うようにする」。そのため、看護師の数が少ない夜勤帯も男性だけにならないよう勤務を組む。
利用者の私的な空間に入り込む訪問看護の場合は、より注意が必要という。名古屋市北区の訪問看護リハビリステーション責任者の藤本龍翔(たつき)さん(29)は、事前に男性が行くことを伝えたり看護中は必要以上に布団をめくらないようにしたりと気を使っている。
活動の幅が広がる一方、気になるのは職場の環境だ。愛知県内の総合病院で働く男性看護師(36)によると、トイレが女性職員と共用。「休憩室も間仕切りで男女を分けただけ」と打ち明ける。少数派ならではのこうした悩みを分かち合う「男性看護師会」結成の動きが広がっている。12年には全国組織も。愛知県看護協会男性看護師会委員の藤井仁さん(46)は「院内外のつながりを大事にし、キャリア形成の方法や患者との接し方などを話し合っている」。
男性医師に比べ、男性看護師への抵抗感が大きいのは、「看護=女性」という考えが根強い表れだ。半面、男性看護師は、子育てなど家庭の事情で女性にはなかなか難しい長期の研修にも参加がしやすく、専門知識の豊富な人も少なくない。厚生労働省の推計では、団塊の世代が75歳以上になる25年、看護職員は2万~12万人不足する。男女それぞれの長所を生かす看護の在り方を考えていかなければならない。
- 血圧などのバイタルサインを測定する男性看護師ら(愛知県看護協会男性看護師会提供)
- 訪問看護の際に女性利用者と話す藤本さん。日常生活や思い出話に耳を傾け、信頼関係を築いている=名古屋市北区で
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