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【医療】食べたいを支える/認知症患者のケア 専門チーム介護施設へ

2015/04/07

個々の「のみ込む力」把握

 のみ込む力が衰えた高齢者や患者の「食べること」を支えるため、医療と介護の連携が広がっている。複数の専門職が協力し、ひとり一人に合った食事方法や口腔(こうくう)ケアなどを探ったうえで、誤嚥(ごえん)性肺炎の防止や生活の質の向上を目指す。(林勝)

 ◇ ◇ ◇

 重い認知症の80代女性が、スプーン1杯のゼリーをのみ込もうとしている。「コホッ、コホ…」と、のどの奥が弱々しく鳴った。「近ごろ、のみ込みに時間がかかり、むせる回数も増えてきたんです」。介護職員が心配そうに説明した。

 女性は福井市内の老人保健施設「ケアホームさいせい」で暮らす。見守るのは、同じ社会福祉法人が運営する福井県済生会病院(同市)の摂食・嚥下(えんげ)チーム。のみ込み障害に詳しい看護師や言語聴覚士、栄養士、歯科衛生士らが、施設に出向いた。

 女性は上の前歯すべてを失っており、食べ物をのみ込もうとすると、上あごとの間に残りやすい。メンバーは「防ごうと上唇や舌に余計な力が入るので、食べるのがおっくうになってしまうのでは」などと意見を出し合った。入れ歯で改善する場合もあるが、認知症のために使えず、食べたものが肺に入ることで起きる誤嚥性肺炎の可能性が高まっているという。 

 「(頭と椅子の背もたれの間に)畳んだタオルを挟んでみたら」。摂食・嚥下障害看護の認定看護師の端(はた)千づるさん(42)が、タオルの厚みで首の傾きを少し変えるよう提案。ちょっとした姿勢の違いで、のみ込みやすくなることがあるため、腕や足の位置、体の角度に気を配った。

 歯科衛生士の川端登代美さん(40)は女性の口の中をのぞき、歯の裏側で塊になった歯こうを見つけた。「気管に入ると怖い。歯ブラシで落として。うがいができない場合は、ガーゼでぬぐって」と介護職員に促した。介助の際のスプーンの使い方や、ペースト状の介護食の固さ加減なども話し合った。

 のみ込み障害のある入院患者の回復のためにつくられたこのチームが、ケアホームに出向くようになったのは昨年5月。退院しても、誤嚥性肺炎の再発で入院する高齢者が絶えないのがきっかけだった。

 施設側も、口を開けたがらない認知症患者への対応に困っていた。地域の歯科医師や介護職員による口腔ケアや、口腔マッサージなどののみ込みのリハビリができないためだった。

 チームを率いていた耳鼻咽喉科医の津田豪太さん(54)=1日から聖隷佐倉市民病院(千葉県佐倉市)勤務=が「病院で肺炎を治しても、介護の現場で誤嚥を防げなければ同じことを繰り返すだけ」と施設側に月2回の訪問を提案した。ケアホームを利用する高齢者は、通所も含めて約160人。食事の介助が難しい高齢者を選び、これまで延べ60人以上をみてきた。

 「1人1人ののみ込む力を把握し、食べやすい環境を整えることが必要です」と端さん。介護福祉士の松原律子さん(41)は「医療専門職からのアドバイスは心強く、現場での自信につながっている」と話す。

 誤嚥性肺炎の防止効果と、食事量が増えたかどうかのデータ解析を行うことにしている。

 病院職員の専門性を生かした介護施設への支援は診療報酬の対象外で、病院に経営上のメリットは直接ない。このため、同様の取り組みを行う病院はまだ少ないという。しかし、同法人では、専門職の技能が磨かれ患者や施設利用者へのサービス向上が期待できることから、今後も継続していくことにしている。

のみ込み障害のある高齢者をみる摂食・嚥下障害の認定看護師や言語聴覚士ら=福井市内で

のみ込み障害のある高齢者をみる摂食・嚥下障害の認定看護師や言語聴覚士ら=福井市内で

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