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【社会】移植の壁と闘った娘 臓器提供、両親の思い

2014/01/22

「自然な選択肢になれば」

 大阪大病院で今月、心臓移植を待ちながら脳死となり、臓器提供をした6歳未満の女児の両親が21日、東海地方の自宅で思いを語った。海外で使われている機器が使えない制度の壁や、広がらない日本の移植医療を痛感した闘病生活。「移植は暗いイメージがある。知っていただくことで、臓器提供が自然と選択肢として出てくれば」と願う。(社会部・中崎裕)

 ◇ ◇ ◇

 目を閉じた娘を抱き上げ、ほおずりした。1カ月半ぶりの抱っこ。補助人工心臓がついていて動かせず、ずっとできなかった。脳死判定後に撮った写真の家族は、穏やかな笑顔だった。3カ月にわたる闘いが終局を迎えていた。

 始まりは、楽しみにしていた初めての運動会の前日だった。幼稚園で嘔吐(おうと)して病院で点滴を受けた。翌日、告げられた病名は難病の拡張型心筋症。医師は「今晩危ない」と語った。母親(38)は「健康診断では何もなく、心臓が悪いなんて全然思いもしなかった」。

 12月初旬、容体悪化で大人用の簡易な補助人工心臓と人工呼吸器での生活が始まった。残された道は心臓移植。母親が「またお話できるよ。ご飯も食べて歩けるからね」と話し掛けると、懸命に首を縦に動かした。まずは海外で20年以上前に開発され、日本では治験中の小児用装置に切り替えることが決まった。

 切り替え直前、人工心臓でできた血栓が脳に回り、脳出血を起こした。「治験だから安定していないとつけられず、1カ月待たないといけない」。医師から伝えられた残酷な制度の壁。治験データを取るため、さらに3カ月は国内で移植を待たなければならない。

 国内で6歳未満の移植は過去4年半で2例だけ。2カ月ほど待てば可能とされる米国での移植を決めた。だが、募金活動を始める直前の今月7日、重い脳梗塞を起こした。移植は不可能。「信じたくなかった。最後まで奇跡を信じた」という父親(34)は「帰ってこい」と呼び掛け続けた。

 11日朝、主治医は「ゆっくり心臓が止まるのを見守っていくしかない」と告げた。「子どもの病気は自分の死よりもつらい。移植を待つ側だったのだから、提供できるときにやらないとおかしい」。父親は自然と提供を申し出た。

 始まった脳死判定。脳波計をつけ、名前を呼んだり首を曲げたりして脳波を確認していく。「手足は温かいけど、生きていないんだ」。判定過程に立ち会い、母親はそう納得できたという。摘出までの間に手形を取り、体を拭き、親族みんなで女児が大好きだった映画「アナと雪の女王」やアニメ「妖怪ウォッチ」の歌を歌った。

 肺を運び出す医師に廊下で会った。「きれいな肺です。全力で成功させます」と告げられた。両親は黒い布に包まれた娘の肺に、声を掛けた。「いってらっしゃい。がんばってね」。長くつらい闘いが終わった。

脳死判定後、ぬくもりのある娘の手と手を重ねる両親=13日(両親提供)

脳死判定後、ぬくもりのある娘の手と手を重ねる両親=13日(両親提供)

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