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【医療】充実求め家族ら切実な声 対応遅れる高校の院内学級

2014/10/21

 名古屋市昭和区の名古屋大付属病院に入院中の伊藤義希さん(17)=愛知県立瀬戸窯業高校2年=が、院内学級の高等部の設置を求めて大村秀章知事に手紙を書いた話題を19日付朝刊社会面で紹介した。高校生が学べる院内学級は現在、東京都と沖縄県などにあるだけで、都道府県によって取り組みの差が大きい。充実を求める関係者の声を聞いた。 (編集委員・安藤明夫)

 ◇ ◇ ◇

 大阪市の自宅で、会社員久保田一男さん(53)、鈴美さん(50)夫妻は、長男の遺影と本物そっくりの卒業証書を見せてくれた。

 昨年1月、大阪府立高を卒業目前に亡くなった鈴之介さん。難治性の小児がん「ユーイング肉腫」の闘病で入院が長く、卒業要件は満たせなかったが、勉強にクラブに頑張ったことをたたえて学校が特別に作り、卒業式で両親に手渡した。

 鈴之介さんは同市立総合医療センターに入院中、院内学級の高等部設置を求めて橋下徹市長にメールを送った。それを機に大阪府が週3回、非常勤講師を派遣する制度を設けた。鈴之介さんも数学の授業を2回受け、大学受験に意欲を燃やしていた。その思いを受け継ぎ、夫妻は昨年11月に「難病学生患者を支援する会」を設立、全都道府県に学習環境の充実を陳情するなどの活動をしている。

 同様の取り組みは今年9月、神奈川県も導入したほか、検討中の県もいくつかある。久保田さんは配慮に感謝しつつ「非常勤だけでなく、ネット授業も導入を。そして院内学級までつなげてほしい」と話す。鈴美さんも「がんを克服して大人になっていく子は志が高く、弱者の気持ちも分かる。社会のリーダーになれる人材を育てる教育システムを」と要望する。

 思春期に小児がんを発症すると、高校受験に影響したり、進学できても休学が長引いて退学に追い込まれることも多い。

 埼玉県在住の会社役員、小畑和馬さん(33)は「高卒の資格を取れたことが、人生に大きなプラスになりました」と振り返る。中学卒業間際に急性リンパ性白血病を発症し、高校受験の機会を2回逸した。入院先の国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)には、小中学生用の訪問学級があっただけ。当時の青島幸男知事に手紙を書いて要望し、17歳のとき、全国初の高校生にも対応する「いるか分教室」が設立された。3年間学んで卒業できた。「ニーズがなければ行政は動いてくれない。本人が声を上げることが、何より社会を動かす力になる」と伊藤さんの活動を評価する。

 がんの子どもを守る会(東京)は8月、下村博文文部科学相に「小児がん患者が切れ目なく教育を受けることができる教育整備」を求める請願をした。院内学級に入るには、もとの在籍校から特別支援学校への転校が必要だ。元の学校に戻る手続きもスムーズにいかない面がある。私立校は復籍に編入試験が必要になる場合も。同会の樋口明子さんは「小児がん治療は、短期入院で長期の自宅療養をする場合も多い。転校しなくても訪問教育を受けられるよう、柔軟な対応が必要」と話している。

 沖縄県では2007年から、県立森川特別支援学校が県内の2病院に高校生にも対応する分校を設けた。県立高校生が小児がんで長期入院することになり、校長からの県教委への相談を機に取り組みが進んだ。主要5教科は中学生、高校生を指導できる教師が常駐。転校や復籍も「公立、私立ともに校長同士の話し合いで、問題なくできている」と友利敏博教頭は話す。

◆伊藤さん「学ぶこと支え」

 伊藤さん=写真=は中学2年で左腎臓にがんが見つかり、2012年3月に名大病院で摘出手術。放射線や抗がん剤治療を続け、12月に退院したが、わずか3カ月で再発した。体調が悪い中、高校入試に臨んで合格。同病院には小中学生の院内学級があり、教師や仲間の励ましが、大きな力になったという。
 ただ、入学式に出たきりで登校はできず、入院が1年半続いている。

鈴之介さんの遺影と、本物同様の「卒業証書」を手に、難病の子たちの学習環境の充実を訴える久保田一男さん、鈴美さん=大阪市の自宅で

鈴之介さんの遺影と、本物同様の「卒業証書」を手に、難病の子たちの学習環境の充実を訴える久保田一男さん、鈴美さん=大阪市の自宅で

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