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【三重】私の不妊体験生かす 津の女性カウンセラーに

2014/05/16

 不妊治療を20年以上続け、子どもを授からなかった津市の野口里美さん(49)が、NPOのピア・カウンセラーとして不妊相談に乗っている。相当なお金と時間を費やし、不安や孤独が付きまとう不妊治療。看護師を志して大学にも通い始め、不妊で悩むカップルに寄り添う。(三重総局・加藤弘二)

 野口さんが不妊治療を始めたのは、24歳の結婚後間もなく、2度の流産を経験してから。ホルモン投与から始め、30代からは体外受精など、より高度な治療に取り組んだ。「治療がいつも生活の中心にあり、ジェットコースターのように心の落差がある日々だった」と振り返る。

 体外受精のため卵子を取り出す際、「状態の良い卵子ですね」という医師の言葉に胸を躍らせ、受精卵を体内に戻してからは夜も眠れないほどの緊張。2週間後、妊娠していないと分かると、自宅の床にうずくまってしばらく動けないほど激しい落胆に襲われた。

 治療や先が見えない妊娠を優先するため、旅行など予定も組めない。夫の転勤のたび、新しいご近所さんの「お子さんは?」という何げない言葉に傷ついた。治療費は年に数10万円。確定申告のため領収書の束を見返すものの「過去の総額は、恐ろしくて考えないようにしていた」。夫は黙って愚痴を聞いてくれた。

 40代に入り、年齢に加えて子宮の病気を患ったこともあり、治療の継続が困難に。打ちひしがれたが、東日本大震災を機に日々の生活のかけがえのなさに気付いた。「日常を大切にし、そのときにやりたいことをやろう」。治療のため多くのことを犠牲にしてきたこれまでとは別の道を歩みだした。

 不妊で悩む人たちを支援するNPO法人「Fine(ファイン)」(東京)のピア・カウンセラー養成講座を受講。1年かけて不妊体験者の心理や基本的な生殖医学を学び、昨年春から津市で定期的なカウンセリング活動を始めた。ピアとは仲間の意味。不妊で悩む人と接する機会が増えれば、と同年4月から三重大医学部看護学科にも通う。

 三重県で不妊の啓発や相談業務を受け持つ子育て支援課の担当者は「一般的な不妊への理解はまだ十分とはいえず、抱えている悩みも人さまざま。当事者同士で励まし合える活動は大変ありがたい」と話す。

 「不妊治療のつらい体験も自分の成長の肥やしだったのかな」と野口さん。不妊を取り巻く現状に、こんな思いを抱く。

 「夫婦の6組に1組が不妊に悩む時代。喪失感にさらされ孤独になるのではなく、もっと楽にオープンに話せる地域社会になれば。そのためには女性だけでなく、男性もより積極的に不妊に向き合ってほしい」

 NPOやカウンセリングの問い合わせはインターネットのホームページから。「NPO法人Fine」で検索できる。

不妊治療の経験を踏まえ、ピア・カウンセラーとして活動する野口里美さん=津市で

不妊治療の経験を踏まえ、ピア・カウンセラーとして活動する野口里美さん=津市で

不妊治療の経験を踏まえ、ピア・カウンセラーとして活動する野口里美さん=津市で

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