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【医療】岐阜大病院の外来抗がん剤治療 薬剤師が「診察前面談」

2014/03/25

医師に処方提案、副作用減る

 通院での抗がん剤治療で岐阜大病院(岐阜市)が、薬剤師による「診察前面談」に取り組んでいる。事前に患者から副作用の有無などを聞き、医師の診察にいかすほか、薬の処方も提案。二重のチェックで確実に状態を把握し、副作用の低減など効果を上げている。 (山本真嗣)

 ◇ ◇ ◇

 「便秘はありませんか? 気持ち悪さなどは?」

 同病院の薬剤師、藤井宏典さん(28)は、外来化学療法室で女性患者(63)の顔を見つめ、優しく問い掛けた。女性は4年前に大腸がんが見つかり、毎週1種類、隔週でもう1種類の抗がん剤の点滴に通う。

 副作用があり、体への影響が大きい抗がん剤を外来で投与する場合、自宅での身体状況や副作用の有無を正確に把握することが鍵を握る。同病院では投与前の血液検査の結果が出るまでの待ち時間に、薬剤師が患者と面談。1人に約20分かけて顔色や表情などもしっかり観察する。

 便の詰まりや赤く腫れた左手親指の痛みを訴える女性。抗がん剤と吐き気止めの影響とみられる。藤井さんは電子カルテに症状の見立てや投与は可能なこと、吐き気止めは減らさず、ステロイド入りの軟こうと下剤の処方が適当と書き込んだ。女性には小まめに水分をとるように指導した。

 診察で藤井さんの提案を採用した医師の高橋孝夫さん(47)は、「患者の状態を事前に把握できるので、投与量や中止の判断に集中できる。的確な処方で副作用を抑えれば長期間の投与ができ、効果も上がる」と指摘。女性は肝臓に転移もあるが、抗がん剤が効き、副作用管理も順調とあって、飲食店でのパートもこなす。

      ◇

 岐阜大病院での外来の抗がん剤治療では従来、薬剤師は医師の処方に基づく抗がん剤の調剤だけをしていた。2008年から一部の患者の点滴の際に、薬剤師が副作用の説明や、自宅での経口抗がん剤の服薬の指導などを開始。翌年から全患者に広げ、11年に診察前面談を導入した。

 外来化学療法室(31床)には、専門知識や問診などの訓練を受けた薬剤師五人が所属し、3~4人が専任で常駐。対応できる人数に限りがあるため、面談は診察前に六割の患者に、4割は点滴中に実施している。医師への処方提案は皮膚障害や吐き気、末梢(まっしょう)神経障害などの副作用対策や痛み、抗がん剤の投与量など多岐にわたる。

 同病院の伊藤善規(よしのり)薬剤部長によると、薬剤師は副作用を抑える新しい薬や組み合わせなどの情報に詳しい。頻繁に医師と情報交換して信頼関係を築いており、医師は提案の9割以上を採用。面談の導入で、医師や薬剤師の指導時間は患者1人当たり約50分と、導入前よりも約十分増えて、きめ細かな対応が可能になった。抗がん剤の投与内容や、検査結果を記した独自の「お薬手帳」で、院外薬局とも情報共有し、適正な処方につなげている。

 このため副作用の強い吐き気を抑えられる率が83%(12ポイント増)に伸びたほか、神経のしびれも8割が軽い程度で収まるようになった。点滴時は看護師が精神的なケアを担当する。大腸がんの抗がん剤治療に通う男性会社員(49)は「複数の人の意見が聞けるので安心できる」と話す。

 岐阜大病院がんセンター長の吉田和弘教授(腫瘍外科)は、「チーム医療で医師は負担が減り、治療計画などに専念できる。高度な治療の患者への説明責任も果たせる」と話す。

◆導入施設、全体の16%

 入院せず、外来で抗がん剤治療を受けることは一般的となってきた。ただ、薬剤師が直接患者に関与する病院はまだ少ない。日本病院薬剤師会が2012年4月に、各地方のがん診療の拠点となっている病院397施設に実施したアンケート(回収率82%)では、薬剤師が患者(一部も含む)と面談し、副作用の確認や処方提案をしているのは、計16.3%にとどまった=グラフ。

 外来化学療法室に薬剤師が常駐しているのは19.4%。必要に応じて出向く場合(48.4%)が多く、ほとんど関与していない病院も12.5%あった。副作用への対応では19%、抗がん剤の減量など治療内容については、46%の病院で薬剤師がほとんど関与していないと答えた。

患者と面談し、親指の痛みの訴えに耳を傾ける薬剤師の藤井宏典さん=岐阜市の岐阜大病院がんセンターで(一部画像処理)

患者と面談し、親指の痛みの訴えに耳を傾ける薬剤師の藤井宏典さん=岐阜市の岐阜大病院がんセンターで(一部画像処理)

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