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中日新聞 進学・医療・福祉NEWS

【暮らし】ホンネ外来 発「延命治療 苦悩する家族」に反響

2016/07/26

 6月21日付の「ホンネ外来 発」では、認知症と重い肺の病気を患う父(78)の延命治療について悩みつつ、治療を続けている女性(44)の思いを紹介した。延命治療で、より決断が難しいのが「命を短くする」選択だ。母=当時(86)=が延命しないことを望んでいたという愛知県の女性(63)が本紙に寄せた体験談を基に、延命治療の中止について考えた。 (稲熊美樹)

 ◇ ◇ ◇

 「延命治療をやめて、母を穏やかに見送ることができました。後悔はありません」。今年6月に母をみとった女性は、きっぱりと話す。

 昨年5月、母は入居していたケアハウスで脳出血で倒れ、救急搬送された。搬送先の病院には、近くに住んでいた女性の兄らが先に駆けつけた。母は一命を取り留めたが、半身まひになり会話ができない状態に。鼻からチューブを入れる経管栄養になっていた。

 退院後、母は施設で暮らしていたが、今年5月、高熱が出て入院。誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしていた。抗生剤がなかなか効かず、1週間ほど高熱でつらそうな状態が続いた。

 医師からは「経管栄養を続けると、今後も肺炎を起こして入院を繰り返すことになるかもしれない」と告げられた。女性は「苦しまずに済むのなら、(直接胃に栄養を送る)胃ろうにした方がいいのかもしれない」と迷った。

 しかし、胃ろうを造設するには手術が必要で、母の体に負担がかかる。さらに、母は倒れる前、長年同居していた女性に「延命治療は望まない」と繰り返し話していた。その母の気持ちを考えると、「ただ生きていることがいいことなのだろうか」という葛藤も生じた。妹(61)と話し合うと「苦しそうだから、楽にしてあげたい」と思っていたという。

 肺炎が治まったころに医師に相談すると、妹とともに3時間ほどじっくり話す機会をつくってくれた。「私たちは、母のために何ができますか」。これまでの経緯や母の生き方、意思を伝えると、医師は「延命治療から、みとるための医療に切り替えることもできるんですよ」と言った。女性と妹は、母の延命治療をやめる決断をした。

 翌日、女性が病院に行き、「お母さん」と声を掛けると、倒れてから初めて、母がじっと女性の方を見つめてくれた。鼻からのチューブは抜かれ、自分でチューブを抜いてしまうなどの危険な行為をしないように手にはめられていたミトンも外されて、すっきりしたようだった。女性は、ミトンの外れた母の手をしっかり握りしめた。

 母は、生理食塩水の点滴と心臓のモニターだけを付けた状態で3週間ほど過ごし、亡くなった。「お母さんの希望をかなえてあげられたと思う」。女性は、じっくり向き合ってくれた医師に感謝している。



◆「本人望むなら」中止決意
みのかも西クリニック 益田雄一郎院長に聞く

【栄養管理の選択 慎重に】

 在宅医療で終末期医療にも携わる「みのかも西クリニック」(岐阜県美濃加茂市)の益田雄一郎院長に、終末期の栄養管理や、延命治療の中止について考えを聞いた。

      ◇

 酸素を吸入したり、痛みを軽減したりする処置は、迷う余地なく積極的に行えばいいが、悩むのは栄養管理だ。

 経管栄養の患者が誤嚥性肺炎になった場合、経管栄養の管が菌の媒体となるので、管をいったん抜かざるを得ないことはある。その間は、点滴など別の手段で栄養を補給する。その後、延命治療を望まない場合には再挿入しないのも選択肢の一つ。

 再挿入しても、再び誤嚥性肺炎を起こすことは十分にあり得る。一方、胃ろうは、栄養の吸収もよく、経管栄養に比べて管理もしやすく、在宅介護でも続けやすい。

 ただ、いったん経管栄養や胃ろうにすると、やめる選択は難しい。点滴で数日は命をつなぐことができるので、その間によく医師や家族と話し合ってほしい。

 特に、命が短くなる決定は、家族も一人だけではなく皆でよく話し合って決めてほしい。分からないことは医師に聞いてもらいたい。医師としては、満足した死を迎えられるように、丁寧に家族とコミュニケーションを図るしかない。本人が元気なうちに延命についての意思を書面などで明確にしていたとしても、その都度、処置を提案し、考えてもらう。

花が好きだった母を思い、女性は毎日手を合わせている

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