2010/01/27
仕込みの温度に細心
グラスに注がれた琥珀(こはく)色の液体。細やかな泡とともに、グビリとのどを鳴らす-。ビールに目がないという人も多いだろう。でも、そのビールってどうやってできてるの。そんな疑問を抱きつつ、安城市赤松町のデンパークにある地ビールレストラン「ホレフェスト」を訪ねた。
雪が舞うほどの寒い日、醸造長の福島功人さん(47)が迎えてくれた。作業場には大きな釜が二つ並んでいる。この日は定番商品の「裸の王様」の仕込み。一度に約千五百リットルを作る。ウオルト・パンと呼ばれる巨大な釜に麦と水を入れて温度を上げる。酵素が麦のでんぷんを糖に変える大切な工程だ。
「温度管理に一番気を使う。高くし過ぎると取り返しがつかないから」。五〇度から六四度、七五度。福島さんが真剣な様子で温度計に目を向ける。糖化途中の麦汁をなめてみると、苦味とともに甘さを感じた。
糖化を終えた茶色い液体を、隣の釜に移す。麦殻などを取り除くろ過の工程。目の細かいすのこのような板の上に麦殻を積んだ「麦層」をフィルター代わりにろ過し、麦汁を取り出す。麦層が均一になるよう、ゆっくりと麦汁を移す。
その間に最初の釜の内部に入って清掃。心地よいぬくもりを感じながらも、麦殻を残さないようにパイプの裏側などを入念に洗い流した。
最初のろ過が始まると、麦層を通った麦汁が元の釜に戻される。一番麦汁だ。味見をすると、ジュースのような強い甘さを感じる。でんぷんがしっかりと糖に変わった証拠だ。
ろ過した釜には、二番麦汁をとるため再び水が投入される。先がT字状になった長い棒を手に、泥のような麦芽をかきまぜると意外に重い感触。ゆっくり差し込んで力強く引き上げる。この作業を繰り返して、混ぜ合わせる。この後、三番麦汁までしぼり、ホップを投入して煮沸。冷却してビール酵母を加え、発酵を促す。
二日後、再び作業場を訪ねた。福島さんがタンクから取り出した麦汁をなめてみる。ふつふつと炭酸がわき上がり、甘みがない。程よい苦味が残って、不思議な感覚だ。福島さんが「順調ですよ」と目を細める。日々、ビールと向き合う福島さんは話した。「おいしいのは、香りを楽しめるビール。原料の香りが感じられるビール造りを続けたい」。(宇佐美尚)
【メモ】ホレフェストは、安城デンビール株式会社が運営。レストランのホールやキッチン、地ビール醸造のアルバイトで時給770~870円。地ビールは「裸の王様」のほか、「人魚姫の恋」「黒鍬麦酒」の3種類が定番商品。持ち帰り用の330ミリリットル入りビンは1本580円。レストランでは、レギュラーサイズ550円、プチサイズ200円を提供している。
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