2010/01/18
不況で自動車関連などの製造業が落ち込んだ結果、企業と労働者のつなぎ役だった人材派遣会社も岐路に立たされている。多くの業者が休業状態に追い込まれる一方で、派遣の規制を強化する法改正をにらみ、規制が緩い請負への置き換えを模索する企業も出ている。
昨年末、三重労働局が県内の派遣会社9社に事業停止命令を出した。期限を過ぎても事業報告を提出しなかったためで、責任者と連絡も取れなかった。ほとんどが製造業への派遣を扱っていた業者で、不況で稼働しなくなったとみられる。
製造業派遣は2004年に解禁され、07年には最長3年の派遣が可能になった。三重労働局に登録した派遣会社の数は右肩上がりに増えてきたが、不況が広がった昨年は歯止めがかかった=グラフ。
登録数だけみると大幅な減少はないが、実際には廃業届を出さないだけで、休眠状態になっている派遣会社が多い。同局は「昨年提出された事業報告では、派遣実績が急に減った業者が多い。“ゼロ報告”も3分の1程度ある」と話す。県内のハローワークに出された昨年1~11月の派遣の新規求人数は、前年同期比で66%も減った。
津市のある業者は、電機工場などに派遣していた全従業員を解雇したまま1年以上が過ぎた。「企業の示してくる契約単価が下がりすぎて、会社が維持できない」と漏らす。
車や液晶テレビの下請け工場に150人のブラジル人らを派遣する松阪市の業者は、不況の前は10社と派遣契約を結んでいたが、現在は3社。長年の付き合いがある工場だけが辛うじて残っている。「企業も先が読めず、なるべく派遣を入れずにやりくりしている。ここ3年ぐらいで参入した新しい派遣業者はほとんど閉めてしまったのでは」と話す。
政府は、製造業への派遣などを原則禁止する労働者派遣法の改正を検討している。三重労働局には昨春ごろから、「派遣から請負に切り替えるにはどうしたらいいか」という企業の相談が増えた。
雇った労働者を指揮し、製造工程の一部を完成させる請負は、派遣と違って事業を始めるのに申請や届け出が必要ない。労働局は請負業者の動向を把握しにくく、担当者は「法改正で派遣から請負に衣替えする業者が増えれば、適正な雇用が行われているかどうか把握しづらくなる」と指摘している。
(木下大資、中山岳)
<視線>「派遣切り」に象徴されるイメージの悪化もあり、派遣という働き方は急速に縮小しつつある。製造業派遣の禁止が検討されているのは、派遣労働者の不安定な雇用環境を改善するのが目的のはず。だが、彼らの正社員化を促す具体策は見えてこない。
規制強化を嫌う企業や派遣業者が、「偽装請負」が問題になったころのような請負方式に逆戻りしては意味がない。労働者が経験や技術を身に付けてステップアップできる仕組みも考える必要がある。
【労働者派遣】派遣会社に登録した人を仕事がある時だけ雇用して派遣する一般派遣と、常に雇用している社員を派遣する特定派遣がある。一般派遣は労働局への許可申請、特定派遣は届け出が必要。派遣資格のない請負業者が雇った労働者に、製造業などの社員が直接指示を出す「偽装請負」は社会問題になり、請負から派遣への切り替えが進んだ。
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