2010/01/06
おいしさと安全追求
小学生のころ、何よりも楽しみだった給食の時間。好物はソフトめんやハンバーグ、カレーライスだっけ。そんな懐かしの味を作り出す現場は、どうなっているのか前から気になっていた。特別にお願いして、豊橋市内十六小中学校の約八千五百人分を手掛ける市西部学校給食共同調理場(神野新田町)に入れてもらった。
「腕時計や指輪をつけていては駄目ですよ」。岩瀬省三場長(60)の言葉に驚いた。給食に異物が混入するのを防ぐためという。調理場に入る前も、つめの間をブラシで磨くなど入念に手洗いをした。
この日のメニューは「いためそば」「スクランブルエッグ」「ミカン」。まずはミカンをクラスごとに袋詰めする作業。「一、二、三…」。傷んでいる実を避け、数に間違いがないように一個ずつ袋へ。が、周囲を見ると、他の職員は指に二個を絡ませながら、こなしていた。
次はスクランブルエッグ作り。千人分まで一度に調理できる鍋を傾け、縁に付いた具をヘラではがす作業を任された。だが家庭の数人分とは異なり、なかなか固まらず、腕を上下左右に動かしているうちに少しずつ疲労を感じてきた。
いためそば作りでは、「スパテラ」と呼ばれる長さ約一・五メートルのしゃもじでかき交ぜた。だが豚肉やニンジン、タマネギなどが次々と投入されると、重みが一気に増し、いくら力を込めても、思うようにかき交ぜられない。
業務長の大村鉄次郎さん(57)が「鍋のふちにスパテラを乗せ、テコみたいに」と手本を見せてくれると、何となく様になってきた。
出来上がると栄養士の鈴木亨奈さん(25)らとともに味見。「うん、いいですね」。出来上がった給食を容器に入れ、運搬係に受け渡し。何個も持ち上げると、額にうっすら汗がにじんできた。
仕事が一段落した後、総括業務長の長坂誠さん(59)は「緊張感も迫られる大変な仕事だが、一番うれしいのは空の容器が戻ってくる時ですね」と汗をぬぐった。子どもたちのため、おいしさと安全を追求する職人のぬくもりを感じた瞬間だった。(安田功)
【メモ】豊橋市は調理員を一般行政職と別に現業職として採用。勤務時間は朝から夕方まで。週休2回。調理師免許は必要ないが、半数以上の人が資格を持っているという。初任給は18歳で約15万円と一般行政職よりやや高め。
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