2009/12/17
どんな大企業だろうが零細企業だろうが同じなんだよ、作るものが。建築用のコンセントやスイッチは互換性がないと困るから。創業時、こちらは男女4人の超零細企業。で、既に大手企業がごろごろいて“超ブランド”。決められた規格の中で、職人さんに「使い良い」とほめてもらえる商品にしなければ勝ち目はなかった。
だから、あらゆることでよそと違うことをして、常に全社員が工夫する社風にしようとなったわけ。どこの社長もネクタイ締めとるなら、おれは締めない。人がやっとることはやらない、反対やろうよと。そういう癖をつけとれば、商品に工夫ができるだろうと。
第一号製品から差別化してる。電柱から電線を引き込むためのジョイントボックス。天井裏に取り付ける時に、台座と木ねじを左手に持たなかん。そこで木ねじを差し込む穴(の内側)にいくつもの突起を出して落ちないようにした。
工夫して売れると、ほかのメーカーがまねするわけやな。で、(それが)売れるかというと絶対売れない。先手必勝。よっぽどメリットがない限り、慣れたところがいいと思うわけやな。しかもこんな小さくて安い商品に次から次へと工夫をしていくと、よそは付いてこれなくなっちゃう。
それでみんな工夫するよりも、値段を下げたがる。(主力製品の一つの)スイッチボックスはさ、全メーカーが(未来工業の製品の)半額。だけど80%というわれわれのシェアは全然減ってない。横並びで、同じもの作ってやっとってもしょうがないじゃない。
人件費でやろうとする(他社の)コスト削減も間違いすぎとる。派遣は(正社員に比べて)給料半分、ボーナス10%、退職金なし、仕事おんなじ、といわれる。それで誰が会社のために頑張ろうと思うか。
この会社は800人全員が正社員で、パートゼロ、派遣ゼロ。年間140日の休日は日本で一番多く、残業なしで勤務時間1600時間は一番短いというのは、労働省(現厚生労働省)がお墨付きくれたわな。すべて社員に喜んでもらうため。出発点は、社員に頑張りたいと思わせなかん。
うちの本社の廊下は朝から晩まで一切、電気をつけないし、コピー機も1台しかない。コストを下げるネタなんかいくらでもある。
政府や経済評論家は「景気が悪い」と言ってもいいよ。でも経営者が言っちゃいけない。不況のせいにしたら、しょうがねえなあで終わっちゃう。どうライバルから取るか、頭を使えばまだまだ需要はあるんだから。
【やまだ・あきお】 旧制大垣中(現大垣北高)卒業後、48年に家業の山田電線製造所に入社。65年、演劇仲間だった故清水昭八氏(前会長)らとともに未来工業を設立し、社長に就任。常識にとらわれないユニークな経営で業容を広げ、91年に名古屋証券取引所2部上場。本社は岐阜県輪之内町。00年から取締役相談役。78歳。中国・上海生まれ。
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