2008/09/18
袋越し食べごろピタリ
実りの秋。「三河梨」の産地、西尾市では大玉の「豊水」の出荷が続いている。祖父の代からナシを栽培している鈴木栄さん(67)の農園を訪ね、収穫を体験させてもらった。
かごを首にぶら下げ、園内に足を踏み入れた。針金で支えられた枝にはボールのような白い紙袋がいっぱい。「害虫よけだよ」と鈴木さん。果実が一つ一つ袋に包まれている。
「きょう収穫するのは、うちの軒先で販売する分。色づいて、すぐ食べられそうな物を選んで」。でも、袋で覆われているのに、どうやって見分けるの?
「ちょうちんに明かりがともったように見えるよ」と鈴木さん。目を凝らすと、実の色がかすかに透けて見える。食べごろのサインだ。
でも、日光が当たると、もう見分けがつかない。両手で光をさえぎって見るが、それでも迷う。「少々早くても、集荷センターに出すから大丈夫。八百屋に並ぶ三、四日後には十分色づくから」。鈴木さんの妻、道子さん(59)が教えてくれた。
摘み取るのにも、コツが必要だ。「下に引っ張っても駄目。実を上に持ち上げるように」と道子さん。言われた通りにやってみると、簡単に取れた。
一個の重さは四百グラム前後。かごが二十個ほどでいっぱいになると、首から肩にズシリと来る。立っているだけで汗が噴き出した。
収穫後は選別作業。実を傷つけないよう慎重に袋をはがしながら、冬の剪定(せんてい)から春の摘芽、摘果、袋掛けと続く作業の苦労話を聞いた。
「年中、仕事があるよ」と鈴木さん。おいしいナシを作るのに労力は惜しまない。取れたてをいただくと、みずみずしさとさわやかな甘みが口に広がった。(広中康晴)
【メモ】三河梨を生産する西尾市、吉良町、一色町の3梨業組合には、130戸の農家が所属。
農家の跡継ぎが多いが、新たに始める場合は農業大学校などで技術を学び、栽培農家で1-2年の研修を受けるケースが多い。収益は10アール当たり50万-80万円。3組合の生産者の平均年齢は65歳を超え、後継者不足が深刻になっている。
転職・求人情報検索(名古屋市・愛知県・岐阜県・三重県)はトップから