2008/09/17
「前例に縛られない、ハートのある判決。夫に胸を張って報告できる」。交通事故の救命作業中に死亡した古橋清弘さん=当時(33)=に労災適用を求めた訴訟。原告の妻美穂さん(44)=岐阜県各務原市=は16日、名古屋地裁判決の内容を聞いて涙ぐんだ。
目の前の事故で救助を求められても無視するのが、運転手のあるべき姿なのか-。判決は「救助をむげに断れば、運転手も良心の呵責(かしゃく)を覚え、社会的にも道徳的非難を浴びる」と清弘さんの行動に理解を示し、労災適用の結論を導いた。
原告代理人の簑輪幸代弁護士も「どちらが正義かを判断してくれた」と快哉(かいさい)を叫んだ。
労災申請から10年。半田労基署は「救命作業は会社の指示ではない」と信じられない判断。納得できずに申し立てた愛知県の審査でも同様に突き返された。国の再審査では8年も待たされた末、「救出は業務と認めても、軽乗用車を道路脇に寄せる作業は業務外」と認められなかった。
プロの運転手として救命にあたった夫の「仕事」を否定された。行政に失望した妻は昨年、司法に最後の望みを託した。「夫は救助を求められて見過ごせなかった。運転手として、人間として、当然ではないでしょうか。行政の判断は世間の常識とかけ離れている」
法律や判例をしゃくし定規に当てはめた結果、行政や司法の判断が市民感覚とずれることは珍しくない。訴訟では、まさにその点が問われた。
転職・求人情報検索(名古屋市・愛知県・岐阜県・三重県)はトップから