2009/12/03
長引く不況で大学生の就職が難しくなっている中、三重大はピンチを新たなチャンスに変えようと、学生たちの意識改革に乗り出した。地元の優良な中小企業を勧めるなど、企業名やブランドにとらわれない就職支援を展開している。
三重大は例年だと希望者の約9割が就職している。10月末現在の内定率は前年より10ポイントほど低い70%前後。就職支援センター長の石阪督規・人文学部准教授は「特にメーカーの業績悪化で、理系の学生が打撃を受けている」と話す。
学内のキャリア支援センターで就職資料を読んでいた工学部4年の男子学生(23)は研究職として自動車関連メーカーに行きたかったがあきらめた。事務系採用枠で残っているメーカーを受験しなおすという。「何としても就職しないと」と焦る。
「不況だけでなく、学生のブランド志向にも内定率低下の原因がある」と石阪准教授はみる。企業選択の基準が知名度、本社所在地、資本金や従業員数などに傾き、仕事の内容より会社の名前で志望する学生が多くなっている。希望する企業に入るため、安易に留年したり、大学院に進学したりする人も多い。少子化の影響か、親たちもこうした行動を許す傾向が強い。既に卒業した学生も就職活動に参入するため、新卒者を圧迫する悪循環を生んでいる。
こうした状況で、三重大に熱い視線を送っているのが県内の中小企業だ。「これまでは採用したくても、来てくれなかった」(県内の中小企業主)。大企業志望の学生が就職に失敗し、大学院入試も終わる冬以降は進路未定の学生が増え、人材確保のチャンスとみている。大学にはこうした求人が例年より多く集まりつつある。
大学も個別カウンセリングなどで、内定のない学生に優良企業も多い地元の中小企業を紹介し始めた。石阪准教授は「従来の就職支援が通じない時代が来た」と認識。「学生の話を聞き、1対1で対応することで、企業も学生も現在の妥協を将来の納得に変えられる」と、就職の「質」の向上に期待している。
(久野賢太郎)
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