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やってみました 記者たちの職業体験ルポ 海上保安庁管制官

2008/09/10

船の安全 許されぬミス

 田原市の名所、恋路ケ浜近くの鉄筋四階建ての建物が、海上の安全と効率的な船の運航を支える拠点だ。海上保安庁伊勢湾海上交通センター。レーダーや船の出入りを示す電光掲示板などがずらりと並ぶ。「船の安全のためには二十四時間、ミスは絶対許されない」と神崎和徳運用管制課長(40)。海の安全を守る海上保安庁の管制官の仕事に触れてみた。
 伊良湖岬と三重県・神島間の伊良湖水道は幅約四キロ。岩礁が多いため、そのうち船が通れる航路は幅わずか千二百メートルしかない。二〇〇三年のセンター運用開始以降、この間を通る長さ二十メートル以上の船は年間、十一万隻以上にのぼる。

 神崎さんの丁寧な説明もそこそこに、「まず現場へ」と三階の管制室内へ。水道内ではさまざまな船が右側通行で行き交っていた。一万トン以上の入り船には小型船から水先案内人が移乗する。

 船舶代理店から運行予定の通報がファクスで続々と入る。管制官の指導で、入港の記録や入港希望時間、この前に出港した港、入港目的などのデータをぎこちなくパソコンに打ち込んだ。隣に座る管制官と内容を相互にチェック。間違いがなければ中央部のレーダー運用卓へ送信する。データの入力ミスは安全運行を守る上で致命的。チェックも声を出しての読み合わせと入念だ。

 同じ部屋には、半径一八・五キロをカバーするレーダーの画面が四台並ぶ。縦横五十センチの大画面には、データを入力した船の移動状況が刻々と示される。天候状況をにらみながら、画面を拡大したり縮小したりして、船の運航に異常がないか目を光らせた。船の安全がかかっているだけに、緊張感が走った。

 海上を監視する管制官は四交代の二十四時間体制。不規則な勤務だが、管制官たちは体調管理に人一倍、気を配っているという。海を守る男たちの気概が感じ取れた。(岡田健三)

 【メモ】センター職員42人の平均年齢は50歳。約80%が巡視船の経験者。全員が国家公務員の海上保安官だが、4年6カ月の保安大学校を終えた陸上勤務者で、初任給は20万1000円。

海の安全を守る管制官の仕事は緊張が続く=田原市伊良湖町で
海の安全を守る管制官の仕事は緊張が続く=田原市伊良湖町で