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やってみました 記者たちの職業体験ルポ 水産試験場職員

2009/09/23

地道にデータを蓄積

 水産業の振興や水質浄化に向けた研究に取り組む蒲郡市三谷町の県水産試験場。海の環境を把握するのに欠かせないモニタリング調査の現場を拝見させてもらおうと、水質調査船「しらなみ」に乗り込んだ。
 船は、試験場の目の前の三谷漁港を午前九時に出発。調査は月に一回、三河湾と伊勢湾の愛知県側を三つのエリアに分けて実施しており、この日は三河湾の西半分が対象だ。約一時間で最初のポイントに到着した。

 船をとめて、酸素濃度や水温を測定するセンサーを海中に降ろしていくと「酸素の濃度が下がっている。貧酸素ですね」と主任研究員の大橋昭彦さん(40)が声を上げた。

 貧酸素とは、プランクトンの死骸(しがい)が海の底で分解される際、酸素が大量に消費され、酸素飽和度が30%以下になった状態。

 貧酸素の水塊が拡大すると海底の生物の生息が困難になり、シャコやエビ、カニなどの漁獲に深刻な影響を与える。

 データを見ると、ある水深から、がくっと水温が下がり、海中で対流が起きていないことが分かる。「風呂が沸いていると思ったら、底の方は水だった、というのと同じです」と大橋さん。温度差のある層ができてしまうことが、貧酸素水塊が広がる一因だという。

 各ポイントでは、天候や海の色なども記録する。海の透明度は、ロープにつないだ直径三十センチの白い円板を海に沈めて目視で確認。ロープを手繰っていくと、約三メートルで見えなくなった。まれに九メートルに達する時もあるが、赤潮発生時には一メートルにも満たなくなるという。

 十二のポイントを約五時間かけて回り帰港。採取した海水は試験場でさらに詳しく分析する。「データの積み重ねがあるからこそ、海の変化が分かり、環境の改善にもつながるんです」。大橋さんの言葉に、地道な調査に対する自負がうかがえた。(中山聡幸)

 【メモ】水産系の高校や大学を経て、県の採用試験を受けるのが一般的。初任給は大卒(研究職)で約21万4000円。蒲郡市の本場のほか、漁業生産研究所、内水面漁業研究所など県内各地に施設がある。

海の透明度を調べる大橋さん(手前)ら=三河湾で
海の透明度を調べる大橋さん(手前)ら=三河湾で