2009/09/20
不況で職を失った人を警備員として雇用し、街の治安向上に一役買ってもらう県警の緊急雇用創出事業がスタートして2カ月が経過した。子どもや女性を狙った犯罪が昨年1年間で187件と多発している春日井市にも8人が派遣され、街頭パトロール員として活躍している。
帰宅途中の会社員や学生らが行き交う夕方のJR勝川駅前。周辺では警備服に身を包んだパトロール員が辺りを見回しながら通行者に声を掛けていく。一人で歩いている女性には「ひったくりに気をつけてください」、無灯火の自転車には「ライトを付けて」-。7月16日以降、平日には毎日見られる光景だ。
県警が7月から始めた緊急雇用対策「子ども・女性の安全確保推進事業」。昨年末以降の景気悪化で失業した人を民間の警備会社を通じて雇用し、犯罪が多発する地域にパトロール員として派遣。春日井、名古屋、豊橋市などの県内16署管内に総勢84人を投入している。期間は来年3月末までで、事業費は約2億3000万円。
春日井署には春日井市内の警備会社から8人が派遣されている。2人1組でチームを組み、昼間は警備会社の車に乗り込んで市内の小学校周辺を巡回。下校途中の子どもたちに拡声器で「知らない人について行かないで」などと呼びかけながら不審者に目を光らせる。午後7時以降は、自転車盗やひったくりが起きやすいJRや名鉄の駅周辺で立ち番にあたっている。
昨年12月に派遣切りにあったパトロール員の一人、島袋直人さん(42)は「ハローワークに行っても求人がない状況だったので非常にありがたい。警備の仕事は初めてだが、人とかかわる仕事はやりがいがある」。
今年3月まで土木会社に勤めていた丹下達男さん(61)も「ボランティアの人には難しい時間帯に活動することで、犯罪抑止になれば」と意欲的だ。
春日井署によると、わいせつ行為や声掛け、つきまといなど子どもや女性を狙った犯罪は、事業が始まった2カ月間で17件と昨年に比べて11件減少(パトロール員配置区域に限る)。今年に入って増加していた駅周辺での自転車盗もこの2カ月間は4件減少するなど、少しずつではあるが効果も表れている。同署生活安全課の山田徳雄課長は「パトロール員に職務質問などの権限はないが、随時街頭に出て活動することで犯罪抑止につながるはず。署員と連携して安心安全なまちづくりに貢献してもらえれば」と話している。
【記者の目】 雇用情勢と治安は連動するといわれるが、失業者に街の安全を担ってもらうのは妙案だと思う。職務内容や時間は限られているが、パトロール員には十分に活躍してほしい。 (木谷孝洋)
転職・求人情報検索(名古屋市・愛知県・岐阜県・三重県)はトップから