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【流儀あり】従業員の陰口に奮起 JPホールディングス・山口洋社長

2009/09/03

 保育事業を始めたのは、人の役に立っていると実感できるから。子育てされてて悩んでるお母さんたち見てたんでね。同じ年代の子供を抱える親として、何とかしたいという思いもありましたし。

 パチンコ店のワゴン飲食サービスからスタートして、10年ちょっと前に1000人ぐらいの従業員がいたんですけど、女性は子供ができるとやめていく。

 それは日曜祝日やっている保育園ありませんし、われわれ夜の7時8時まで仕事があったんですけど、そういう時間帯に対応する園がない。「福利厚生ということであれば赤字でも」と一時預かり専門の託児所を広島市で始めたんです。

 2000年の法改正で、社会福祉法人などにしか認められなかった保育園の運営が株式会社にもできるようになって。助成金をいただければ事業として成り立つと分かったんですね。それと、日曜祝日とかをやらない理由が単に保育園側の都合だったというのが分かって。これを変えたいという思いがすごくわいてきた。

 それで方向転換したんですけど、事業が大きくなるにつれて、なかなか言うことを聞いてくれない保育士さんが出てきた。それまで勤めていたところと違うのが不満なんですね。「社長は保育のことを何も知らない」と陰で言うわけです。

 保護者のふりをして役所にクレームを言いに行って「こんなとこに保育さしたらいかん」とか。つらかったですね。自分とこの従業員に後ろから竹やりで刺されているんですから。

 変わったのが保育士の国家試験の勉強を始めてからですよ。この事業、もし本気で続けるんだったら、私自身もっと勉強しないといかんと思って。大学院に入って二年間で百冊の専門書読んで、論文書いて。従業員の誰にも負けないくらいの専門知識が身に付きましたから。離職率も減ったし、「社長は自分たちのことよく考えている」という雰囲気になって黒字転換した。

 いろんな研修項目を用意して、勉強する人は待遇も処遇も上がっていくというのもやっています。はっきり査定で差をつけるんですよ。能力というより、頑張っているかいないかを見ますね。

 今は職員が楽しく働ける職場というのを経営理念にしています。保育士さんが楽しければ子供は絶対に楽しいんですよ。お母さん方に対しても優しい気持ちになれますから。

 【やまぐち・ひろみ】85年、明治学院大法学部卒。大和証券を経て93年にジェイ・プランニング(現JPホールディングス)を名古屋市に設立、社長に就任。02年にジャスダック上場、04年に日本保育サービスなどの子会社を設立して持ち株会社化。06年に聖徳大大学院(千葉県松戸市)で児童学修士を取得した。JPホールディングスは保育所60のほか学童クラブ、児童館などの運営も手掛け、09年3月期の連結売上高は約72億円、うち保育事業は約51億円で業界最大手。48歳。京都市出身。