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【流儀あり】遅れているから面白い バロー・田代正美社長

2009/08/27

 小売業はまだまだ改革、改善の余地がある。進んでいるから面白いと思う人間と、遅れているから面白いと思う人間と2つあると思うんだよね。おれは、遅れているから面白いんじゃないかなあというのが(入社した)一番(の理由)だわね。

 2つの方向性を常に持っていた。まず業界の中で先行したい、そのための戦略をどうやって描いていくかということ。もう一つは現実の部分として、おれが入った時は8店舗だったけど、そのうち2店舗はタイルもはってないし、瓦屋根だし、そりゃひどい状況だったわね。いい環境で社員に働いてもらいたいと。そのためにどうするか、ということを常に追ってた。

 流通業には経営指導をするコンサルタントがすごく多くて、指導を受けるとか意見を聞くだとかがあるけど、おれは、あくまでもコンサルタントに教えてあげると。現場を持っているのはわれわれだし。その辺で物流の作り方から何から違うわね、よそと。同じようにやってても全然違う。

 今年新入社員を調査したら、リンゴの皮をむけるのが10人に1人しかいないと。刃物を持ったことがない人間しかいないのに、魚のさばき方なんかの教育がどこまでできるのか。じゃあ(食品加工を一括集中して行う)プロセスセンターを造ろうと。100店舗で(さばき方などを個々に)教育するよりも、1カ所できちっと出荷検査をすればリスクはぐっと少なくなる。現実の姿を具体的に見ないと、なかなかアクションには入れないよね。

 われわれの商売は、10店舗くらいまでは参入障壁はすごく低い。ところが100店舗になったら維持していく障壁というのはすごく高くなっちゃう。

 例えばわれわれは自社工場でパン生地をつくり、店舗内で焼いたパンを98円で売っている。工場がないとパンメーカーから生地を買うわけだけど、それでは利益が出ない。でも最低、100店舗ないと工場は動かせない。

 つまり、企業規模が大きくなれば仕組みを変えざるを得ない。その仕組みをどれだけ適正に作れるか。メーカーの資質の人間が必要になってくる。

 今まで先行してきた企業は全部、それで失敗している。だから、われわれはいかに製造機能を持っていくか。「製造小売業」になっていかないとこれ以上の成長はできないと思ってる。

 【たしろ・まさみ】 早稲田大法学部卒、71年山武ハネウエル(現山武)入社。バロー創業者の伊藤喜美氏(現相談役名誉会長)の長女と結婚し、77年に同社入社。94年6月から社長。入社当時は8店舗だった岐阜県東濃地方のスーパーを、ドラッグストアやホームセンターなど448店舗を展開する中部地方屈指の総合小売業に成長させた。62歳。横浜市出身。

自らの経営方針について語るバローの田代正美社長=岐阜県多治見市の同社本部で
自らの経営方針について語るバローの田代正美社長=岐阜県多治見市の同社本部で