2009/08/26
職人技のゲソ鉄板載せ
えびせんべいで知られる一色町で、せんべいを焼いてみたい。三河一色えびせんべい工業組合長の犬塚辰志さん(60)が経営するイヌヨ製菓の工場を訪ねると、原料はエビではなく、イカだった。
「昔はエビもやっていたけど、うちはイカのほうが評判が良くて…。でも、作り方はほとんど同じだから」と犬塚さん。ネットのようなキャップで頭をすっぽり覆い、室温三五度の工場内に足を踏み入れた。
最初に原料を見せてもらった。イカは青森県八戸市産で、一匹に十本ある足「ゲソ」だけを冷凍。一つ十六キロのかたまりが積み上げられている。「十二時間かけて自然解凍します」。機械で加熱して一気に解凍すると、味が落ちるらしい。
解凍後、柔らかくなったゲソに味付けするのは、長男の直季さん(29)の役目。売り先の注文に合わせ、味付けも微妙に変えるという。こうして下ごしらえしたゲソに、でん粉をまぶし、専用の機械で焼き上げていく。
機械のラインに立ち、ゲソを五~六グラムずつに分けながら、鉄板に載せる作業に挑戦。足の長さによって十本を二~三分割するのだが、これが意外に難しい。うまく切り離せずにいると、見かねた犬塚さんが「引っ張ってもだめ。足の付け根から折るように離してみて」と教えてくれた。
ひときわ長い触手は折り畳むように置き、鉄板上に三列に並べていく。鉄板の温度は一五〇度。放熱で顔がほてってくる。鉄板は次々と流れ、もたもたしていると間に合わない。ラインを挟み、向かい合ったパート従業員の女性の半分の作業もこなせなかった。
せんべいは機械を通じ、みりんとしょうゆで再び味を付け、乾燥機へ。三十二分間で一枚が仕上がる。この工場では従業員十二、三人で、一日に四万枚を焼き上げるという。
自ら鉄板に並べ、焼いたせんべいは穴が開いていたり、不格好だったり。犬塚さんの講評は「穴が開いていると、割れやすい。商品になるかどうか」。それでも、焼きたては最高にうまかった。(広中康晴)
【メモ】イヌヨ製菓では、焼き上げと包装の二ラインがあり、二時間交代で作業する。作業時間は午前八時から午後五時まで。時給は七百五十円。ほとんどの従業員がパート勤務。特別な技術は必要としないが、「強いて言うなら、手先が器用な人」と犬塚さん。
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