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【社会】「床屋さん」危機感 国家試験の応募者激減

2009/07/27

国家試験の応募者1/3に

 理容師国家試験の受験者が大幅に減っている。8月から9月にかけて行われる試験の申込者は1232人で過去最少。9年前に始まった現行試験の1回目と比べ、3分の1程度に落ち込んだ。若者を中心に男性客の美容室志向が強まり、理容店の数も減少。業界関係者は「理容師の高齢化は進み、後継者不足は深刻」と危機感を募らせている。

 理容師免許は1998年度、発行者が都道府県知事から当時の厚生相に変更。移行期間を経て2000年6月から現行の「理容師国家試験」がスタートした。夏と冬の年2回実施され、同年6月の第1回試験の申込者は3306人だった。

 理容師美容師試験研修センター(東京)によると、08年度の理容師国家試験申込者は2590人と05年度より34%減った。愛知県の申込者は160人で2割近くの減。三重県は26人で横ばいだった。

 受験するには厚生労働相が指定する専門学校などの養成施設を卒業する必要があるが、生徒数の減少で閉鎖に追い込まれるところが相次ぎ、養成施設が一つもない岐阜県などでは、試験の申し込みを受け付けていない。

 厚労省によると、理容店の数は86年の14万4994をピークに、07年度末には13万6768に減少。現場で働く理容師は25万人前後で横ばい状態が続く。全国理容生活衛生同業組合連合会(全理連、大森利夫理事長)によると、全国7万5000人の理容店店主の平均年齢は62歳。

 一方で美容室業界は拡大。70年代後半には理容店と同程度だった店舗数は、07年度末に約22万と、大きく上回っている。

 全国2位の3945人(7月現在)の組合員数を誇る愛知県理容生活衛生同業組合の担当者は「愛知はまだ、他地域より状況はいい」と話すが、高齢化や後継者不足で、昨年の同時期より165人減った。

 世界的な景気後退がモノづくり産業が集積する愛知県を直撃。同県への就労人口の流入が減ったことが最大の要因とみられ、担当者は「こんな時代だから手に職をつけるのがいいと思うが、先行きは不透明だ」と話す。

 【理容師国家試験】 原則として高校卒業者が養成施設で2年間(通信制は3年間)、実技や公衆衛生などを学んだ上で受験する。試験は実技と筆記の2種類あり、第19回試験までの合格率は44~72%。理容師の業務はヘアカットやカラーリング、シャンプー、パーマなど大半が美容師と共通しているが、顔そりは法令上、理容師にしか認められていない。日本人理容師の技術レベルは高く、世界大会では日本代表チームの上位入りが続いている。