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やってみました 記者たちの職業体験ルポ 木材加工

2009/07/23

のこぎりにも一苦労

 工場内はヒノキの香りが漂っていた。のこぎりやかんなを使った木材の加工作業で、木くずが飛び散る。市域の七割を森林が占める豊田市では、木材関連業は重要な仕事だ。製材店で作業を一日体験した。
 体験先は同市足助町の「河合木材店」。四十年以上、地区に店を構え、スギやヒノキの針葉樹以外にカシなどの広葉樹を加工、大工も請け負ってきた老舗だ。木材の加工を約六十年続けてきた田沢茂之さん(78)に仕事を習った。

 製材の基本は、のこぎりとかんなかけ作業。「のこぎりくらい使える」と張り切って動かしたが、「ゆっくり動かさないと、まっすぐ切れないよ」と的確なアドバイスを受けた。看板になる木材を切ったが、直角をはかる定規で、すき間を見せつけられた。

 かんなかけで挽回(ばんかい)しようと意気込むが、力を入れて引いたかんなから出る木くずは幅が不定だったり、途中で切れたり。それでも何回か繰り返すうちに、幅が同じできれいに丸まった木くずができ始めた。「それくらいならなんとかなっている」。何とか及第点をもらった。

 最近の仕事場では、かんな、のこぎりに代わり、回転のこぎりや、木材を通すとかんながかかる機械などが活躍する。田沢さんは「便利になったよ。ただ、大きいサイズの木材は人間の手作業が必要な個所があるけどね」と笑った。

 落ちこみ続ける木材需要。採算がとれず山林は放置され、保水能力が低下。災害への関連も指摘される。

 不況の中、地区の木材店は共同で、公園整備などの木を使った新しいビジネスを模索する。河合茂男社長は「新しいビジネスで、森林整備と地区の雇用の問題を解決したい」。そう話す姿に、共感を覚えた。(池田宏之)

 【メモ】河合木材店では、木材の加工から建築工事まで幅広く請け負う。見習いのうちは時給1000~1200円だが、道具が使えるようになり、仕事のスピードがあがれば昇給していく。一人前になるには、木材加工で2、3年、大工で5年ほどかかる。

木材にかんなをかける田沢さん=豊田市の河合木材店で
木材にかんなをかける田沢さん=豊田市の河合木材店で