2009/07/15
どの店も同じメニュー、同じ味-。チェーン店特有の画一性を見直し、店舗ごとに特色を出そうとする取り組みが、東海地方の外食チェーン業界で広がっている。独自のメニューやイベントによる“脱・金太郎あめ”の店づくりが消費者の心をとらえられるか、注目を集めている。
カレー専門店の壱番屋(愛知県一宮市)は6月から、店舗ごとに独自メニューや販売促進イベントを取り入れる新制度を導入した。
狙いは客数増。同社の2009年5月期の既存店売上高は客数の減少で前期比2・9%減と落ち込んでいる。「店によって女性の来店客率が39%から0・3%とばらつきがある。全店が同じでうまくいくはずがなかった」(宮崎龍夫営業本部長)との反省から、店ごとの客層に合わせた企画を現場に提案させることにした。
毎週20~30の提案が上がっており、「豚テキカレー丼」(岐阜市の宇佐店)などの“店限定カレー”が各地で続々と登場する予定だ。
ステーキ店チェーンのあさくま(名古屋市)は昨春、赤字店で店別のメニュー開発を導入。ランチを中心に売り上げが伸びたことから、今年4月から全店で展開することにした。
先行導入した星崎店(同市南区)は、周囲に中小企業の事務所が多いことからサラリーマン向けメニューを強化した。ステーキなどを割安に提供し、ランチの売り上げは前年同期比20%増で推移。
伊藤照典営業本部長は「仕入れコストは1~2%上がったが、ただの“ファミレス”だった店の雰囲気が変わった」と手応えを語る。
チェーン店の“個店対応”が注目を集めるきっかけとなったのは、「餃子の王将」を展開する王将フードサービス(京都市)の好調ぶり。6月の既存店売上高は26%増で、不況下にあって23カ月連続の前年超え。好業績の秘訣(ひけつ)として、店長への大幅な権限移譲が指摘されている。
約40の基本メニューに加え、各店が10前後の独自メニューを持っており、鈴木和久専務は「マニュアルでは平均点どまり。現場が指示待ちをやめ、試行錯誤することで初めて満点の答えが分かる」と意義を語る。
ただ、こうした個店運営は、チェーン店の特性を失わせる“諸刃(もろは)の剣”ともなりかねない。
野村金融経済研究所の田阪克之アナリストは「店ごとの味やサービスの“ぶれ”をなくすのがチェーン運営の基本。個別対応と両立させるには、高いレベルで経営体制を変える必要がある」と難しさを指摘している。
転職・求人情報検索(名古屋市・愛知県・岐阜県・三重県)はトップから