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【経済】主力品統廃合に課題 サントリーとキリン統合交渉

2009/07/14

 経営統合の交渉入りが13日明らかになったキリンホールディングス(HD)とサントリーHD。食品・飲料業界で国内最大手と2位を交渉のテーブルに向かわせたのは、少子高齢化に伴う市場縮小への危機感だ。統合による規模拡大で海外メーカーに対抗する構えだが、交渉の行方には、過去の再編劇とは異なる難題が横たわっている。

 ■期 待
 13日の東京株式市場。サントリーHDとの統合交渉入りが伝えられたキリンHD株の終値は、前週末比101円高の1392円と、終値ベースの年初来高値を更新した。

 市場全体が大きく下落する中で、全銘柄中3位の値上がり率。投資家の再編期待が高いことをうかがわせた。

 食品業界では2007年に水産大手のマルハグループ本社とニチロ、今年4月に乳業大手の明治乳業と菓子大手の明治製菓が経営統合。いずれも、原材料調達や物流コストの低減による経営基盤の強化と、得意分野の違いを生かした補完関係の構築が狙いだった。

 ■重 複
 キリンとサントリーも、経営統合が実現した暁には、既に一部で進めている調達や物流の共通化を加速させるとみられるが、問題は、得意分野が完全に重複している点だ。

 両社ともビールなどの酒類と清涼飲料事業が売り上げの大半を占める。しかも、ビールなら「一番搾り」と「ザ・プレミアム・モルツ」、緑茶は「生茶」と「伊右衛門」など、有力ブランド同士がしのぎを削る状態だ。

 売れ筋商品への絞り込みを進める小売り業界に対抗するには、商品構成の削減が急務だが、多額の費用をかけて育成したブランドの統廃合には双方から反発が予想される。

 ■過 剰
 過剰となる国内の設備や人員削減が問題化することもありうる。

 さらに、今年上半期の国内ビール類シェアは両社で50%を突破。ともにオセアニア地域で高いシェアを握る飲料や乳業大手も傘下に持ち、内外の独占禁止ルールに抵触する可能性もある。こうした点から、両社の統合話には「驚いたが、どうも現実感がわかない」(アサヒビール関係者)という声も。

 ビール業界に詳しい経済ジャーナリストの永井隆氏は「ビールはキリン、飲料はサントリーが主導するのではないか」と予想。「海外進出は欧米勢が浮足立っている今がチャンス。そのためには統合を実現させるしかない」としている。