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【社会】改正移植法A案が参院可決 「脳死は人の死」、年齢制限を撤廃

2009/07/13

 「脳死は一般的に人の死」と位置付け、臓器提供の年齢制限を撤廃、本人が生前に拒否表明していなければ家族の同意で可能になる改正臓器移植法(A案)が13日午後の参院本会議で可決、成立した。同法が1997年6月に成立して初の改正となる。国内で15歳未満の子どもからの臓器提供に道を開くが、救命救急医療が十分に行われなくなるのではとの懸念も根強い。

 投票結果は賛成138票、反対82票だった。

 改正法は中山太郎衆院議員らが提出。国会審議で提出者は「法的には脳死が人の死となるのは臓器提供の場合だけ」と説明したが、脳死を限定的にとらえた現行臓器移植法の規定を削除、脳死の定義を転換する。

 脳死判定までの条件が緩和されることから患者団体や日本移植学会などは提供者(ドナー)の大幅な増加が見込めると歓迎している。ただ、衆院解散や内閣不信任をめぐる与野党の思惑に翻弄(ほんろう)され、審議が消化不良だったとの指摘もある。

 現行法は本人が生前に書面で意思表示し、家族が同意した場合に限って脳死判定、臓器摘出を認めるとの世界的にも厳しい条件で、これまで脳死下での臓器提供は81例にとどまる。このため大人、子どもを問わずに多額の渡航費用を工面し、海外で移植手術を受ける患者が後を絶たないのが実情だ。

 一方で国際移植学会は昨年、渡航移植禁止を求める宣言を発表。世界保健機関(WHO)も追認方針で、渡航移植の道が閉ざされかねないとして、法改正の機運が高まった。

 改正法に先立ち、脳死をめぐる現行法の規定を復活させる修正案は否決した。