2009/07/09
就職活動(就活)が様変わりしている。景気悪化で再び“氷河期”が到来し、「親子の二人三脚で、乗り越えよう」という風潮が広がっている。親が就職先を紹介し、就活イベントにも同伴する「親子就活」の現状を紹介する。
リクルートスーツの学生に交じり、資料片手に真剣な表情で企業ブースを回るシニア男性。都内で開かれた大学三年生向けインターンシップ(就業体験)イベント会場に、次男と訪れた東京都江戸川区の大学教授尾崎正延さん(61)だ。
尾崎さんは息子の将来が不安で仕方ない様子。「未曾有の厳しい就職戦線に立ち向かうには、情報不足の子どもに親が助け舟を出すことも必要。就活最前線の実態を肌で感じ、息子に的確なアドバイスをしようとイベントに参加した」と事情を説明する。「息子も私の意見は聞くと言っている。考えを押しつけはしないが、今後も自分の人脈を総動員して支えるつもり」と力を込める。
「親子就活」はもはや“主流”。人事アウトソーシング業「レジェンダ・コーポレーション」の調査では、二〇一〇年度新卒就職希望の学生・大学院生約六千百人の63%が親から何らかの協力を得ていた。
協力内容は、交通費やスーツ代などの「金銭援助」が47%でトップ。志望動機や自己PRなどを書く応募書類の添削や面接練習も12%あった。少数だが、企業説明会予約の代行などもあり、親の強力な後押しが裏付けられた形だ。
「自己分析を手伝ってもらったり、社会人としてのアドバイスをもらったりした。両親が支えてくれたから、内定がとれた」
四日、東京都港区で開かれた立命館大の保護者向け懇談会。「親子就活」で外資系企業に内定した女子学生から、こんな報告もあった。
長女が三年の宇野沢智香子さん(48)は「就活は本人任せのつもりだったが、現実はそうもいかないようだ。親ものんびりしていられない。情報収集から始めます」と尻をたたかれた様子だ。
中央大も毎年、都道府県単位で保護者向け懇談会を開き、就活支援に力を入れている。立命館大や日本福祉大などは、保護者向けに就活情報冊子を配布している。親子就活を支える大学が増えているが、その背景には、「就活にきめ細かく対応することで、少子化時代の大学の生き残りを図る狙いもある」(中央大キャリアセンター・丸太初太郎部長)。
一方、親からの支援に対して、学生側はどう感じているのか。前出のレジェンダ社の調査では、「親の関与が好ましい」40・5%、「好ましくない」40・4%でほぼ拮抗(きっこう)した結果となっている。
まだ内定をもらっていない帝京大文学部四年の山中菜都美さん(22)は「父からの紹介で何社か受けた。自分一人でやり通すのは正直きつい。親の支援はありがたい」と本音を語る。専修大商学部四年の高根啓輔さん(22)も「求人のある企業がだんだん減る中、父から『うちの会社はどうだ』と言われ、うれしかった」と感謝する。対して、就活を自立の一歩ととらえる跡見学園女子大三年の須賀沙奈詠さん(20)は「手伝ってもらったら自分のためにならない」と“独力”で臨む覚悟だ。
中央大文学部の山田昌弘教授(家族社会学)は親子就活は基本的に好ましくないという考えだ。「学生が自分で工夫してやった方が、就職してからの仕事能力にもつながり、自立心も実力も身に付く」と指摘。一方で「企業が正社員採用を絞るなか、就活を通じた本人の自立より、安定して稼げる会社に入る方が優先される“価値”になっている。若年者の非正規雇用化など厳しい職場を知る親が、子の将来を心配して助けるのは理解できる。親子就活は当分続く」と予想する。
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