2009/07/08
名地裁判決 安全面の配慮怠る
中部電力(名古屋市)に電気技術主任者として勤めていた藤原健二さん=当時(67)=が、退職後に胸膜悪性中皮腫で死亡したのは同社がアスベスト(石綿)対策を怠ったためとして、妻重子さん(70)=名古屋市緑区=ら遺族3人が中電に6000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が7日、名古屋地裁であった。多見谷寿郎裁判長は「マスクなどを使っていれば発症しなかったと推認できる」と中電の安全配慮義務違反を認め、3000万円の支払いを命じた。
原告代理人によると石綿対策をめぐり電力会社の責任を認めた判決は全国で初めて。電力会社を相手取った同様の訴訟は全国で起こされており、先例として注目を集めそうだ。
最大の争点の健康被害をいつ予見できたかについて、多見谷裁判長は判決理由で1960年制定のじん肺法を挙げ「直接作業でなくても場所によって暴露作業に当たると解釈でき、この時点で深刻な健康被害を予見できた」と指摘。石綿粉じん被害に関する通達や研究結果が昭和30年代以降に相次いで公表された点も重視した。
そのうえで判決は、藤原さんが新名古屋、四日市の両火力発電所で試運転業務をしていた58(昭和33)~63年、計33カ月にわたり石綿粉じんが飛散する環境下にいたと認定した。
中電側は「藤原さんが直接、石綿製品を取り扱うことはなかった」と主張したが、多見谷裁判長は「石綿を含む保温材を配管などに取り付ける作業の周囲で試運転をしていた。直接石綿を扱わなくても暴露作業に当たる」と退けた。
また被害対策について「安全な方法で作業すべきことを周知するなど社員教育を尽くさなかった」と批判した。
判決によると、藤原さんは58年入社。愛知、三重両県内の火力発電所に勤務し、定年退職後の2005年に中皮腫を発症。同年12月に業務上災害として労災認定を受け、06年9月に死亡した。
■中部電力の話…主張が認められず残念。石綿問題には、今後とも関係法令等を踏まえ、必要かつ適切な対応を行っていく。
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