2009/06/14
和菓子職人は「熱さとの戦い」
訪問先への手土産や茶席には欠かせない和菓子。和菓子店の店先には、色や形など見た目にも楽しませてくれる菓子が並ぶ。季節に合わせて入れ替わる和菓子作りを体験しようと、JR安城駅近くの両口屋菓匠(安城市御幸本町)を訪ねた。
挑戦したのはまんじゅうの基本ともいえる「上用まんじゅう」。すり下ろした伊勢イモを解凍して砂糖を混ぜ、米粉を加えて生地を作る。「イモの粘りが皮をふっくらさせるんだ」と社長の清水正幸さん(62)が笑みを浮かべた。
白くしっとりとした生地は“もち肌”と呼ぶにふさわしい。「あんを押し込むようにするんだ」。アドバイスを聞いてあんを包む。指を動かすと少しずつあんが皮に包まれてシューマイのような形に。しかし、あんをすべて包みきれない。無理に押し込んで丸めると、皮はあんで少し茶色に染まり、指の跡ででこぼこしている。次々に包みあげる清水さんは手品師のようにも見えた。
まんじゅうを蒸す間に、清水さんはあんを作る機械から小豆の皮と実を分ける筒状の網を取り出した。「網の目の細かさがポイント。目を粗くすればあんの滑らかさが失われる」と自信に満ちた表情だ。「少しの違いが大きな違いになる」からと材料選びにも気を使う。
蒸し器の扉を開けると蒸気が噴き出し、上用まんじゅうが姿を見せた。形はふぞろいで満足とは言えないが、白いまんじゅうを前にほおがゆるんだ。
甘いもちを生地で包んだ「若アユ」、清涼感たっぷりの「くずまんじゅう」にも挑戦。焼き上がったばかりの生地を素手で丸めたり、軟らかくした熱々のくずで、あんを包んだり。菓子作りの裏側に「熱さとの戦い」があると初めて知った。
「気を使って作った菓子を、お客さんがにっこりして買ってくれる。その人たちは裏切れない」。清水さんが力を込めた。 (宇佐美尚)
【メモ】専門学校や職業訓練校などで基本を学び、和菓子店で5~7年ほど研修をして技術を磨く例が多い。その後、独立したり実家の和菓子店を継いだりする。収入は店によってさまざまだが、修業中は月に16万円ほどが一般的。
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