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【滋賀】「フツーの仕事」獲得への闘い 運転手の記録映画、大津で公開

2009/06/10

 月に500時間以上働いていたセメント輸送運転手が、労働組合に加盟して新会社で働くまでを描いたドキュメンタリー映画「フツーの仕事がしたい」が9日、大津市京町の滋賀会館シネマホールで公開された。撮影、編集も務めた土屋トカチ監督(37)=川崎市=は「仕事で大変な思いをしている人に見てもらえたら」と話している。 (猪飼なつみ)

 映画の主人公は「運転することが好き」という皆倉(かいくら)信和さん(38)=横浜市。月に550時間も働き、家に帰ることもままならない。会社の赤字を理由に給料はカット。限界を感じた皆倉さんは労組に加盟。しかし、脱退するよう会社ぐるみで脅迫され、母親の葬儀にまで押しかけられる。

 皆倉さんは過労から小腸に穴が開き、難病のクローン病と発覚。生死の間をさまよった。労組は皆倉さんが勤務していた運送会社だけでなく、セメント会社なども訴え、運送会社を廃業に追い込む。

 土屋監督は「許せないと思った。どこの会社にも当てはまるところがあるのではないか」と、2006年から2年間に渡って撮り続けた原動力を話す。

 映画の冒頭で皆倉さんは土気色の顔をしていたが、最後には明るい表情で労働条件が保証された新会社で運転手として働く。「皆倉さんが倒れたとき、もし亡くなったら何のために生きてきたのかと思った。今元気に運転している姿を見て、本当にかっこいいと思う」と土屋監督。

 土屋監督も2000年、勤めていた映像会社から赤字を理由に突然解雇された。初めて労組に入り、その時の解決金で撮影に使ったカメラを買った。「皆倉さんと同い年で、自分自身を重ねるところもあった」と振り返る。「映画は皆倉さんだけの話ではない。日本には貴重な労働3法がある。見に来てくれた人が『フツーの仕事』は何なのかを見直すきっかけになれば」と訴える。

 この映画は滋賀会館が市民主体で運営されてから6周年を記念し公開された。上映を決めた映画配給会社「RCS」の佐藤英明代表(47)は「6年前、滋賀会館が県の財政難から閉館したとき、どうしても残したいと思った。そのときのエネルギーを映画から再び感じた」と話していた。

 公開は20日まで。問い合わせは同館=電077(522)6232=へ。