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【長野】「帰国支援金」の申請急増 南米日系人、失業給付終了と重なり

2009/06/05

 失業した南米日系人の帰国費用を国が援助する「帰国支援金」の申請者が、最近になって全国的に増え始めた。県内でも5月後半から急増。年末年始に解雇された人の雇用保険給付が終了するなど、背景にはいくつかの要因があるとみられている。(妹尾聡太)

 制度は3月末に発表され、4月1日に開始。各地のハローワークを窓口とし、法務省や厚生労働省の審査を通れば、帰国費用として本人に30万円、扶養家族1人につき20万円が支給される。

 厚労省が集計する全国の申請人数は、4月30日時点で1095人。5月から伸び始め、6月2日には3523人になった。県内の傾向も似ており、長野労働局によると4月末は61件だったのが、5月29日には160件(221人)に増えた。

   ◇  ◇

 「今月に入って極端に増えた」というハローワーク伊那。通訳が同席した6月2日だけで12件の申請があり、合計81人になった。担当の井口功相談員は「年末年始に解雇された日系人の失業給付期間が終わる時期と、ちょうど重なってきた」と指摘する。

 伊那地域で働く日系人のほとんどが、最大で150日間の給付を受けられるという。この間に職を探しても見つからず、収入も途絶え、帰国するケースが目立っている。

 申請が増える別の理由として、制度が知れ渡ったことや、再入国制限が緩和されたことも挙がる。開始当初、現状と同じ在留資格での再入国は「当分の間」認められなかった。それが5月11日に「原則3年間」へと変更。不安が和らいだとの声もある。

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 2度目の来日で5年半、箕輪町に住む日系ブラジル人の深瀬清さん(57)も、昨年末にベアリング工場での職を失った。失業給付が終わる7月に夫婦でサンパウロに戻る。

 支援金について、最初は「金を渡すから帰れ、と言われたようでショックだった」と打ち明ける。しかし「このまま生活保護を受ければ日本に迷惑を掛ける。むしろ政府は優しいのでは」。そう思い直し、受給を申請しようと決めた。

 再入国制限の緩和については「自分の年齢を考えると、再来日しても働き口はない。帰国とはあまり関係がない」といい、希望者を心配する。「ブラジルでの生活も大変だ。3年後を見通すのは難しいと思う」

帰国を決めた日系ブラジル人男性(左)と握手を交わす井口相談員=伊那市のハローワーク伊那で
帰国を決めた日系ブラジル人男性(左)と握手を交わす井口相談員=伊那市のハローワーク伊那で