2009/06/01
イワシの稚魚のシラス。全国有数の水揚げを誇る静岡県の特産魚種だが、春先から不漁が続いている。5月は遠州灘や駿河湾などで漁が本格化するが、魚影が薄くて出漁を見合わせる状態。シラスが乗る黒潮が沿岸から離れて流れているのが原因という。今のところ回復の兆しは見えず、漁師ら関係者をやきもきさせている。 (報道部・赤野嘉春、湖西支局・角雄記)
「これしか捕れなかった」「燃料代も出ないよ」。31日早朝の舞阪漁港(浜松市西区舞阪町)。6日ぶりに出漁した漁師らからはため息がもれた。92隻が漁に出たが、1ケース(35キロ入り)に満たない漁船もあった。
豊漁だった昨年は値崩れさせないために1日30ケースに制限していた時期もあったが、状況は一変。舞阪漁港の5月の出漁回数はこの日を含めて9日で、昨年の同じ月に比べて13日も少ない。
45年のベテラン漁師、和久田保男さん(60)は「去年は荷降ろしに時間がかかり、順番待ちの船がずらりと並んだのに…。早く回復してほしい」と苦笑いを浮かべた。
県内のシラス漁は、3月21日から翌年の1月14日までが操業期間。主要6漁港(新居、舞阪、福田、御前崎、吉田、静岡)の3月の水揚げ量は5・8トンで、前年同月の380トンを大きく下回った。4月は622トンと、やや持ち直したものの前年同月の55%どまり。5月の水揚げの集計は出そろっていないが、各港とも満足な漁はできない状態という。
県水産技術研究所(焼津市)によると、シラスの平均年間漁獲量は(1985年から2008年までの23年間)7120トン。標準偏差が1911トンと小さく、安定している。今回の不漁は黒潮が大きく蛇行した04年以来だが、4月には黒潮が沿岸に近づいているため、同じ現象ではない。
主任研究員の長谷川雅俊さん(49)は「シラスは黒潮の陸地側に集まる。夏場になって漁況が盛り返した年もあり、今年も好転する可能性はあるが、今のところ兆候は見えない」と話す。
小売り関係者もシラスの到来を待ちわびている。遠鉄ストア本部(浜松市中区)では、3月以降に生シラスを仕入れたのは二度だけ。釜揚げシラスも、仕入れ価格は昨年に比べて3割ほど高く、和歌山などの他県産で賄っている。商品部の竹内幹雄課長は「小売価格には跳ね返っていないが、不漁が続けば考えないといけない」と気をもんでいる。
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