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やってみました 記者たちの職業体験ルポ 看護師

2009/05/27

感謝の言葉が支え

 やさしい表情で患者に対応する一方、激務を理由に人材が不足する看護師。日々、どのような苦労や楽しみがあって、患者と向き合うのだろうか。豊橋市民病院で貴重な経験をさせてもらった。
 午前八時半。ナースステーションに看護師が集まる。「血圧は八〇前後で推移」「覚せいすると大声を出す」…。深夜勤務の同僚からの引き継ぎ事項に聞き入る。その間も重症患者に取り着けた心電図の警告音は鳴りっぱなしだ。

 まず行うのは点滴の準備。用意された薬品が正しいかどうか二人で確認し、容器に移し替える。パソコンを載せた台車を患者の前まで移動し、ベッドや患者の足に着けられた識別番号をバーコードで読み取り最終確認。やっと、患者に点滴が注がれた。主任の長谷川亜里美さん(37)は「忙しくても、やらないと安全は守れない」。

 最初に患者の体をタオルでふく作業を任された。相手は脳出血で倒れた男性。「お顔、ふきますね」。患者が驚かないように声をかけ、鼻に入ったチューブが外れないよう慎重にタオルを動かす。

 次は別の患者をベッドのまま検査室へ移動。人や壁にぶつからないように周囲に気を配りながら、ゆっくり引っ張る。簡単な動作だが気は抜けない。

 昼前には、くも膜下出血で体の一部にしびれが残る五十代の男性に昼食の介助。「ご加減は?」「病院なんて楽しいことないね」。雑談をしながら、スプーンでご飯やはんぺいを口に運ぶと、こちらの空腹を見透かしたように「少し食べなよ」と一言。コミュニケーションが取れてちょっぴりうれしくなった。

 吉田千代子看護師長(45)は「精神的、肉体的につらい。だけど患者や家族が『ありがとう』と言ってくれるから頑張れる」。夜勤は多くて月五日、帰宅後も医療雑誌で勉強することなどが求められる毎日。平穏な生活とは程遠いが、仕事への誇りをにじませた言葉が印象的だった。(安田功)

 【メモ】3年制の看護学校を経た上で国家試験を受け資格を取得するのが一般的。豊橋市民病院は3交代で初任給は20万5400円。採用人数はばらつきがあり、同病院は高い診療報酬を受け取れる「7対1看護」に向け採用を強化中。

他の看護師と情報交換をする長谷川亜里美さん(中)=豊橋市民病院で
他の看護師と情報交換をする長谷川亜里美さん(中)=豊橋市民病院で