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【富山】パン好調 初の黒字 知的障害者就業『くろべ工房』

2009/05/24

3月期決算大幅増収
態勢強化が奏功 工賃アップ 意欲も増大

 知的障害者十八人が働く黒部市吉田の「くろべ工房」が、二〇〇九年三月期決算の就労支援事業収入で、前期比67%の大幅増を達成、初の黒字を確保した。主力のパン製造販売を強化し、不況のあおりを免れた。(平井剛)

 一般企業の売上高にあたる収入は、前期比九百十七万円増の二千二百八十六万円。原料費や人件費などを差し引いた損益は百八万円で、〇六年の開所以来初の黒字。

 収入増の要因はパンの売り上げの伸び。一日当たりの生産を四百個から六百個とし、個人や企業などに販売して回る営業担当職員も二人から四人に増やした。品ぞろえが六十種類と豊富で、注文を順調に増やすことに成功した。

 同工房は焼き菓子の製造販売と部品の組み立ても手掛けるが、焼き菓子では販売の大幅増は見込みにくく、部品組み立ては受注量が景気に左右されやすい。永井出管理者(44)が「主食のパンを売って稼がないことには収益を増やせないと判断した」と語る通り、経営資源をパンに集中したことが奏功した。

 成功の背景には、〇六年の障害者自立支援法施行で、障害者の工賃向上や福祉施設の経営改善が求められるようになったこともある。

 工房ではパン製造に携わる障害者の工賃を、従来の三百円から県の最低賃金に合わせて増額。人件費は膨らんだが売り上げの増加でカバーでき、永井管理者は「給料が増えたことで障害者が生き生きと働くようになった」と喜ぶ。一〇年三月期は、受注をさらに増やして五百万円の増収を目指す計画だ。

 県障害福祉課によると、授産施設や作業所がこれまで請け負ってきた部品組み立てなどの単純労働は不況で減少傾向。同課は「くろべ工房のように、下請けから脱却して売れる商品作りに取り組む経営努力が、施設側にも求められている」と話している。

袋に値札シールを張る障害者。パンの売り上げは順調に伸びている=黒部市吉田のくろべ工房で
袋に値札シールを張る障害者。パンの売り上げは順調に伸びている=黒部市吉田のくろべ工房で