2009/05/17
学生から就職恋愛相談も
「おはよう」「お疲れさん」-。静岡産業大藤枝キャンパス(藤枝市)の正門前で、学生に積極的に声を掛ける警備員の男性がいる。学生から恋愛や友人関係の悩みを打ち明けられることも。ゴールデンウイーク明けで5月病になる新入生がいる中、元気いっぱいのあいさつで応援している。 (焼津通信部・高橋健一)
警備員は、後藤英次さん(60)=藤枝市岡出山。
7年前に静岡産業大で働きだし、自発的にあいさつを始めた。初めは、きょとんとした様子だった学生たちだが、数日たつと、あいさつが返ってくるようになった。
今ではすっかり日常の光景に。「就職できるかな」「彼女ほしいんだけど、うまくいかない」などと相談を持ちかけることも多い。「いつもあいさつしてくれる。部活のことも気にして聞いてくれます」と情報学部4年、池田美穂さん(21)。
後藤さんは、家業の段ボール製造会社を廃業した過去がある。がんが見つかって治療したり、トラック運転手時代に助手席が全壊する大事故を起こしたこともあった。
「生きていることへの恩返し。あいさつなら、お金もかからないしね。する方も、される方も気持ちいいでしょ」いつも独りぼっちでいる男子学生が気になっていた。友人がいる気配もなく、声を掛けても下を向いている。しかし、2年近くあいさつを続けていると、お辞儀が返ってくるようになった。
1週間に1回ぐらいしか大学に来ない学生も。見かねて「もったいない。親が汗水垂らして稼いだ金をどぶに捨てるものだぞ」と諭した。しばらくすると、学生は「心を入れ替えます」と話し、登校するようになった。
後藤さんは語る。「最近の学生は人間関係がドライと言われているけど、本音では、もっと人と深く付き合いたいはず。きっかけがほしいだけなんだ」
入試広報課の川合孝弘さん(35)は「1000人いる学生の顔を全員知っているようで、CMに出演する学生を探す時に紹介してもらったこともありますよ」と頼りにしている。
警備員といえば、厳しい表情で不審者の侵入を防ぐこわもてのイメージが強い。「あいさつをしていると、すぐ顔を覚えるんです。本業に余分なことではないですよ」。後藤さんはにこやかに話してくれた。
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