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やってみました 記者たちの職業体験ルポ オーダーメードゴルフクラブ作り

2009/04/22

『理想』求め部品選択

 ゴルフの米国ツアーにも参戦する石川遼プロのクラブをオーダーメードで製作したこともあると聞き、刈谷市高須町でゴルフ工房「エール」を経営する田頭(たどう)良一さん(45)を訪ね、クラブ作りを教えてもらった。
 工房では職人かたぎというよりも物腰柔らかな紳士という雰囲気の田頭さんに「ゴルフはしたことありますか?」と聞かれた。記者の恥ずかしい経験を語ると「じゃ、私が打つのをまず見ていてください」。さまざまな硬さのシャフトを選んで的に打ち込み始めた。

 シャフトの硬さの違いで、ボールは右へ左へと軌道を変えた。この試し打ちで「その人の力量やくせなどを見極める」という。続いて、クラブの部品や性能についての講義が始まった。

 「ヘッド、シャフト、グリップ。クラブの部品はこれだけ。でも、シャフトだけでも打った時にどこがしなるのかというキックポイントや重量、硬さなどさまざまな仕様が違う」と田頭さん。シャフトは現在、二百種類は商品化されていてそのすべての仕様を覚えているというから驚く。

 講義の後は、実際のクラブ作り。プロ用には特別に注文した部品を使ったりするが、アマチュア向けには通常、メーカーが発売している部品を組み合わせて作る。今回は、中古クラブを修業用に借りて、ヘッドやグリップをはずし、また組み立てた。言葉で書けば簡単だが、ヘッドをはずすのにバーナーで熱を微妙に加えるなど、二十年以上クラブ作りを続けてきた田頭さんら先達の知恵が詰まっている。

 言われるままに組み立てることができてほっとしていると田頭さんは「組み立てることは簡単。難しいのは、人を観察して理想の弾道が描けるようパーツの組み合わせを選ぶこと」という。ちなみに、三年間手掛けた石川プロのモデルになるとコンマ数ミリ単位でヘッドの重量配分も変えたという。「やっててきりがないよ」と田頭さんの目が笑った。(吉田幸雄)

 【メモ】田頭さんは商社マンから、この世界に。工房には毎年、数人ずつが通い、無料で技術を教える。「米国では、クラブのオーダーとかフィッティングは確立した世界だが、日本ではまだまだ。ゴルフ業界のすそ野を広げるためにも技術はオープンで教えたい」というのが理由だ。独立には1年弱から数年までさまざまだが、独立するとサラリーマン並みから月100万円稼ぐ人もいるという。

「その人の理想の弾道をつくってあげるのがクラブ作り」と話す田頭さん=刈谷市高須町のゴルフ工房エールで
「その人の理想の弾道をつくってあげるのがクラブ作り」と話す田頭さん=刈谷市高須町のゴルフ工房エールで