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【社説】パート春闘 待遇改善に全力挙げよ

2009/04/09

 大手企業のベアゼロ・ショックが中小企業やパート労働者の春闘に影を落としている。大手や正社員との賃金・待遇格差を縮めるのは組合の役割だ。月末のヤマ場に向け全力を挙げてもらいたい。

 春本番とはいうものの中小企業労働者、パート・アルバイトたちの賃金引き上げや待遇改善交渉は例年にもまして厳しく回答の遅れが目立つ。組合関係者は疲労感を隠せない。

 先月中旬の自動車など大手企業の集中回答以降、今春闘での交渉結果が徐々に明らかになってきた。

 日本経団連の集計では五十一社の妥結額は加重平均で五千八百十五円、前年より五百七円も少なく四年ぶりの前年割れとなった。

 また連合の統計では昨年と同一比較できる千百四十八組合の賃上げ回答額は五千三百五十三円。前年比七百六十三円もの減少だ。

 中小企業の回答も低い。連合が中小共闘ベースでまとめた六百七十五組合の妥結額は加重平均で四千二百二十六円。前年比四百三十二円の減と不振だった。

 さらにパート労働者の時間給引き上げは妥結した九十五組合の単純平均で一六・八一円と前年に比べて一・一三円のマイナスである。

 経営側が雇用維持を優先している以上、今春闘での低額回答は避けられない。むしろ中小・パートは健闘している格好だろう。

 だがパート労働者についてはもっと成果が上がっていい。

 「改正パートタイム労働法」が施行されてからちょうど一年たつ。同法は正社員と同じ働き方をしているパート(短時間労働者)に対して賃金や教育訓練などで正社員と同様の待遇を確保することや、正社員への転換制度導入などを企業側に求めている。

 この一年、流通業や銀行などは正社員転換制度を相次いで導入した。しかし賃金改善はまだ遅い。厚生労働省の二〇〇八年賃金構造基本統計調査では短時間労働者の一時間あたりの賃金は男性千七十一円、女性九百七十五円である。

 今春闘では賃上げのほか通勤費や慶弔休暇、一時金、昇給ルール、正社員転換制度などを重点目標に掲げている。これらの取り組みは適切だから組合がしっかりと回答を引き出すことが重要だ。

 雇用も景気もまだ厳しい状況が続く。失業者も増える見通しだ。政府は近く大規模な景気対策を打ち出す。中小・パート労働者の待遇を大幅に改善すれば景気回復の足がかりの一つになろう。