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【雇用崩壊】正社員雇用ピンチ 日銀短観最悪、製造業で過剰感強く

2009/04/02

 日銀が1日発表した企業短期経済観測調査(短観)は、大企業・製造業の景況感が過去最悪になるとともに、雇用の過剰感が、輸出急減に苦しむ製造業から内需型の非製造まで、幅広く高まったのも特徴だ。体力低下に耐えられなくなった企業が、正社員のリストラや採用抑制を一気に本格化させれば、国内の消費がさらに落ち込む悪循環に陥る恐れもある。

 企業の雇用人員判断DIは、それぞれが雇用している人員について「過剰」と答えた企業の割合から「不足」との回答の割合を引いて算出する。とりわけ目を引くのは、極端な輸出不振に見舞われた大企業・製造業のDIが「35」と、ITバブル崩壊後の2002年3月調査の「36」以来の高い過剰感を記録した点だ。

 これは、世界的な需要減による業績悪化を背景として厳しい人員削減を進める自動車や電機など輸出大手にはなお人員に対する過剰感が強く、今後一段と人員削減が進む可能性を示している。

 ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎主任研究員は「製造業の派遣切りなどが問題となっているが、全体の雇用者数などは、これまであまり悪くなっていなかった」と指摘。雇用の悪化は景況感の落ち込みに遅れて表れる特性もあり、同氏は「正社員のリストラなど大規模な雇用削減が起こるのはこれから」と予測する。

 現在は、企業が従業員の出勤日数や残業時間を抑制するなどして雇用を維持している面もあるが、業績の悪化が続けば、いつまで持ちこたえられるか不透明。また、非製造業の雇用人員判断DIが全規模で9ポイント上昇の6と不足から過剰に転じたことも懸念材料だ。

 昨年9月の米証券大手リーマン・ブラザーズ破綻(はたん)後に輸出不振が直撃した製造業に比べ、卸売りや小売り、電気・ガスといった内需型産業を中心とした非製造業は、前回の昨年12月調査では、マイナス3と不足感を維持していた。

 しかし、企業経済の大黒柱だった輸出産業の落ち込みは、賃金や消費減少などの形で国内景気の急激な悪化に直結。非製造業も雇用の受け皿になれない日本経済のもろさが露呈した。

 深刻なのは、これから本格化するとみられる雇用削減の動きが、消費者心理をさらに冷え込ませ、国内企業のいっそうの業績悪化を招きかねないことだ。

 みずほ総研の大和香織エコノミストは「もはや失業者の増加は避けられない」とした上で「企業は(休業手当などに国が補助を行う)雇用調整助成金制度などを活用し、せめて急激な失業増に歯止めをかけるべきだ」と指摘している。

 (杉藤貴浩)